「個人としての市場価値」が問われるように

変化が激しいということは、新しいフロンティアが広がるということです。社会が変われば、新しいチャンスが生じます。それを捉えることができれば、新しい成長ができるのです。日本では、第2次世界大戦後に、こうした時代が到来しました。ソニーやホンダなどの新しい企業が登場し、目覚ましい成長を実現しました。

世界ではいま、情報関連の技術によって、新しいフロンティアが開けつつあります。それを捉えることが必要です。高度サービス産業で重要なのは、個人の独創性を引き出せるような労働環境です。それは、創造性から生み出される革新が、極めて大きな利益と成長をもたらすからです。

アップルはiPhoneという一つの非常に革新的な製品によって、これだけの成長を遂げました。グーグルの成長の基盤にあるのは、優れた検索エンジンです。フェイスブックの場合は、新しい形態の社会的な交流の仕組みの創設です。ごく少数の人間の革新的なアイデアが、現代のリーディング産業を作っているのです。

このため、アメリカをリードするハイテク企業は、さまざまな工夫をして、個人の創造性を引き出そうとしています。現代の世界をリードしている企業は、いずれもアイデアとイノベーションによって成長しています。それは、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と言われるアメリカの先端企業で顕著ですが、それだけはありません。例えば、中国のアリババもそうです。

多くの日本人は、これまで組織に対する依存心を強く持っていました。できるかぎり大きな企業に入社し、そこで昇進するという生き方です。それは、ある意味で合理的なものでした。しかし、いまや組織にすべてをかけてしまうのは、リスクが高いのです。組織自体がいつまで続くか分かりません。だから、組織に依存すればよいのではなく、一人一人が「個人としての市場価値(マーケットバリュー)を持っているかどうか?」を問われます。

最も必要とされる、経営者の再教育

「どの組織に所属しているか」でなく、「どれだけの能力を持っているか」が重要なのです。逆に言えば、組織にこだわる必要は薄れています。つまり、「組織人から個人の時代へ」という変化が生じようとしているのです。組織の中で上司の指示どおりに仕事をしていればよい時代は終わりました。ましてや、上司の機嫌をとってゴマをすれば出世できる時代は、大昔のものになりました。

変化への対応は、個人の立場から必要であるばかりでなく、日本全体としても必要なことです。日本の産業構造や経済構造を大きく変えなければいけません。