あなたの部署が会社になったら?

三戸政和氏

まだ半信半疑の人が多いかもしれませんね。

ちょっと違う視点で考えてみましょう。ある程度の規模の企業で管理職を務めた人なら、15-30人程度のチームを率いている(いた)はずです。ならば、そのチームが会社になったと考えたら、どうでしょう。会社にするにはいくつか機能が足りませんが、それで毎年経営計画を立て、予算を執行し、売り上げを伸ばし……と、ほとんど1つの小さな会社のように回してきているはずです。

そういう人は、自分のいた業界で、従業員が同じ規模の中小企業なら十分マネジメントすることができるでしょう。以前のチームがそのまま本当に1つの会社になった、と思えばいいのです。そして、その規模のチームを運営していくためのノウハウや経験は十分にあるはずです。

なによりも中小企業を買うことの大きなメリットは、あなたが専門性を生かすことができ、勘所もわかる業界で、今、経営が成り立っている会社を設備も、顧客も、従業員も、仕入れ先も、取引銀行も、そのまま引き継ぐことができる点です。

どんな企業であれ、経営上の一番の課題は「事業が継続できること」です。きちんと利益が出ているのであれば、とりあえずは現状の業績をそのまま保てばOK。そう考えれば、マネージャー経験のある人にとって決して難しい仕事ではありません。

流れを大づかみに把握できたら、それから会社をよく見て、「よくない」「古い」と思う部分に改善の手を加えていけばいいのです。

中小企業は経営上無駄が多く、非効率であるため、業務改善によって利益率を上げやすいことが管理職であったあなたにはプラスに働くのです。

“当たり前の改善”を実直に

商品ごとの利益管理や在庫管理、従業員の労務管理等が甘い、昔からの取引関係から相見積もりを取ることもなく高額で支払い続けている、売れば売るほど赤字になる商品を何の疑問も持たずに一生懸命売っている、年に数個出るか出ないかの在庫を大量に保管したままになっている……などなど、大企業では考えられないことがいくらでもあるのです。

そこで、前の会社で使っていた管理システムを入れて業務を効率化する、仕入れ先と交渉して原価を下げる、IT管理を導入するなど、大企業がやっている“普通のこと”を実行するだけで、たちまち効率化と収益向上が図れます。業績も大きく改善する可能性が高いのです。

さらには、これまでやっていなかった新規営業を当たり前に実行するだけで、ほとんどのところが誰もがうらやむ利益を創出することができるようになります。私の知り合いの投資ファンドが経営する中小企業では、長年自動車メーカーAの下請け“だけ”をしていたのですが、投資ファンドが主導して、自動車メーカーBに同じ製品を供給したところ、2倍の値段で売れるようになった、という事例もありました。

このように、ポテンシャルは高いものの、経営のやり方がよくないために業績が悪いままの中小企業は少なくありません。私たちのような投資ファンドも、そんな中小企業に投資をして、“当たり前の改善”を実直に行っています。