アマゾンに愛着、年収350万未満の人も1000万以上の人も

また、ユーザーの年収別にNPSを見てみると、アマゾンユーザーは年収が上がれば上がるほどNPSが高まる傾向にあり、とくに年収1000万円以上はプラス6%と、かなり高い数値を出しています。「実質的な価格を気にしなければ、アマゾンのサービスは使い勝手がよい」ということが読み取れます。年収1000万円以上の楽天ユーザーでもNPSはマイナス36%と楽天全体の平均値程度なことを考慮すると、価格以外の面ではアマゾンに軍配が上がっているといえるでしょう。

NPS(ネット・プロモーター・スコア)は世界的コンサル会社「ベイン・アンド・カンパニー」のフレッド・ライクヘルド氏により考案された。NPSの数値が高いほど顧客のロイヤルティーが高いことを意味し、従来の顧客満足度より収益との相関性が高いとされる。エモーションテックによると、ウェブサービスの平均は約-28%で、アマゾンのスコアは極めて高い。またアマゾンは利用者の年収が高くなるとNPSも高くなる傾向にある。

しかし、アマゾンの快適さを支えている一因である、プライム会員向けの即日配送サービスは配送業者の負担が大きく、2017年にはヤマト運輸がアマゾンの同サービスからの撤退方針を表明しています。現在はヤマト運輸のほか、丸和運輸機関が参入していますが、配送業者が即日配送に耐えられなくなったとき、NPSは低下し収益にも陰りが出る可能性があるため、対策を練る必要があるでしょう。

よくも悪くもポイントシステムに依存している楽天は、不安要素が多いです。楽天ユーザーが楽天のUI/UXや配送といった点に魅力を感じていないことはデータからも明白ですから、アマゾンのように優れたUI/UXを持つサイトが楽天と同水準のポイントサービスを開始すれば、ユーザーがそちらに流れるのは時間の問題です。

また、ポイント還元率が高いものの、楽天に比べUI/UXや商品数で劣るサイトもあります。Yahoo!ショッピングはその典型例で、月額およそ500円のプレミアム会員であれば常時5%還元、ソフトバンクまたはワイモバイルの携帯電話を持っていれば10%還元、さらにキャンペーン日が重なれば15%超の還元率と、楽天よりも容易に高い付与率を実現できます。

こうしたサイトが使用感を改善してきた場合、ポイントに支えられている楽天は対抗する手段がなく、顧客が流出するおそれがあり、楽天にとってはUI/UXと還元率、両面からも脅威が迫っている状況です。楽天は大きく舵を切らなければいけないときが迫っているのかもしれません。

山野祐介
フリーライター
ECサイトやスマホの最新事情に詳しい。月刊誌で連載中の「1週間食費0円生活」では、さまざまなECサイトのポイント制度やキャンペーンを駆使し、効率よくポイントを貯めて、生活費を浮かせる方法などを紹介している。
(写真=iStock.com)
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