「~でなくては」という発想を捨てる

AかBかCかという狭い枠でのマーケティングでものを考えると、どうしても小さなリニューアルしかできなくなります。

すでにある選択肢から一度離れ、「とにかくおいしいものをつくろう」というシンプルな発想から商品はつくるものだと思っています。

コンビニの商品には、その土地の味覚に対応した地域対応商品が複数存在しています。例えば、おでんやそばやうどんの汁などです。私たちも現在、おでんのつゆを地域別に七種類に分けて提供しています。

『売れる化』(本多利範著・プレジデント社刊)

例えば関東は、基本のかつおと昆布だしつゆを用意しています。北海道を含めた東北地域はこの基本つゆをベースに貝や煮干しだしをプラスし、中部は牛すじのうまみを加えています。また中国・四国は煮干しだしに鶏だしを加え、九州はアゴだし、鶏だし、シイタケのだしなど、その地域の人々になじみのあるつゆで勝負をかけているのです。そばも同様で、こちらは3種類の汁で対応しています。

これらのだしの味は、もはやその地域に住む人々の血となり肉となり体を構成しています。一口飲んで、ホッと息をつける。

「懐かしい味だな」と感じてもらえる、その安心感が大切なのです。関西の人に、無理やり関東のだしを押し付け「これがおいしいはずだから」というのは、それはちょっと違うだろうと思うのです。

地域性をあえて持たせず、全国勝負

しかしその一方で、あらゆる商品に対して「地域性」を前面に出して商品開発をすればいいかというと、それも少し違うのではないかと思っています。「地域性を大切にする」ということは、響きはいいですが、全国区で勝負できる自信がないということにもつながります。

地域性を超えてもおいしいものはやはりおいしいのであり、日本人として普遍的なおいしさを求めた一本勝負をすべき場合もあるのではないでしょうか。

そのような思いから、ラーメンに関しては地域性をあえて持たせず、全国勝負をしています。

醤油ラーメン、味噌ラーメン、豚骨ラーメンの三大ラーメンに加え、「昔ながらの醤油ラーメン」「ちゃんぽん」など、その時々でテーマを持たせた商品を開発していますが、基本的に全国展開で皆さまに味わっていただきたいと思っているのです。

さて、もう少し具体的な話をしますと、コンビニやスーパーなどに置いてあるチルドラーメンには課題がいくつかあります。

これまでどうしても専門店に並ぶような味や食感が実現できていなかったのは、やはり調理から実際に食べるまでのタイムラグが大きいという事情があったからです。

ラーメン専門店で食べる場合、茹でたての麺をすぐに汁に入れてお客さまに提供できます。しかしチルドラーメンだと、麺を茹でてから食べるまで、どうしても時間がかかってしまうのが問題です。これはラーメンをはじめ、麺類にとっては致命的な弱点です。

どれほどおいしい麺を開発でき、どれほど完璧なスープができても、時間のたった麺を投入するのではどうしても間の抜けた食感になってしまいます。そこが長年の研究のポイントでした。