「分数ものさし」で分数の加減乗除ができる

しかし、賢一朗君はこれで満足したわけではなかった。かけ算、わり算も説明できるはずだ、と考えたのだ。

そんな賢一朗君の様子を見ていた裕一朗さんは、自分の母校である静岡大学に、この分数ものさしを持ち込んでみた。すると、同大教育学部の塩田真吾准教授が興味をもってくれた。塩田准教授から改良へのアドバイスと課題をもらいながら、少しずつ改良を重ねた。

たとえば、わり算のアイデアが生まれた原点がマグネットを使った試作品だ。12分の1や12分の2が1個ずつバラバラになっている。12分の1を並べているうちに、2分の1や3分の1を整数に置き換えるというアイデアが思い浮かんだのだ。

例えば6分の1÷2分の1の計算。6分の1、2分の1はそれぞれ、「12分の1がいくつ分」と整数に置き換える。6分の1÷2分の1は「2個」を「6個」で割ること、つまり、2÷6=3分の1と計算できるのだ。

「この『整数に置き換える』アイデアを賢一朗がもってきたときには、わが子ながら驚きました」

分数の計算がわからない――そんな友達の相談を受けてから1年。ついに賢一朗君の満足いく「分数ものさし」ができあがった。大学がお披露目したところ様々なメディアから取材を受け商品化も決まった。

「こだわったのは小学生の筆箱に入る15cmで作ったこと。特別な教材ではなくて、普段から使うことで分数感覚が自然と身につくと思います。たくさんの人に使ってもらえるものができたらいいなとは思っていましたが、本当に商品になるなんてびっくりしました」(賢一朗君)