では、これからどんな不妊治療が、また夫婦の様子が描かれるのでしょうか。夫婦の関係でいうと、夫の理解があるぶん、五十嵐夫妻は幸せかと思います。夫の中にはまったく寄り添わないどころか、「妊活」を邪魔する人もいるのです。

「こんなこと必要ないだろう!」と、自分だけでなく妻の検査や治療まで否定してしまい、女性が一人で悩みを抱え込んでしまうケースも珍しくありません。劇中では須賀健太さんが演じる大器の後輩が「未婚だけれど精液検査を受けた」と話していますが、実際にはそこまで理解のある男性は非常にまれです。

オーク銀座レディースクリニックの培養室

ドラマで深田さんは、悩める女性を、より深く演じることになるでしょう。今のところ夫の理解があるとはいえ、精神、身体、そして経済的な負担は重くなっていきます。どこまで描かれるか分かりませんが、具体的な検査としては、まず1カ月で卵管やホルモンの検査などが出そろい、3カ月ごとに、タイミング法から、人工授精、体外受精とステップアップしていきます。体外受精まで進めば、1回の排卵で35~55万円と費用もかかります。さらに精神的な負担も大きくなります。これだけ頑張っているのに、報われない――そんな思いが募っていきます。

多様な家族のかたちが描かれる

「一生子供ができないのでは」という不安や、恐怖感が次第に大きくなってくる。ふさぎ込むこともあるでしょう。私自身も35歳で不妊治療をした時に、気持ちが真っ暗になりました。でも、「手順を踏んで前に進んでいきましょう」というしかない。どこまで深掘りするかはわかりませんが、第1話を見る限り、今後にも期待できると思います。女性の苦しみを、丁寧に描いたドラマになるのではないでしょうか。

他にも、高橋メアリージュンさんと平山浩行さんが演じる「子供を作らないカップル」や、眞島秀和さんと北村匠海さんが演じるゲイカップルなど、いろいろな家族のかたちを描こうとしていることにも好感が持てます。

ゲイカップルが「養子を持とうか」と相談するシーンがありましたが、養子縁組は男女関係なく、「子供を生めない」となった時の一つの選択肢。また、ゲイカップルでも提供卵子と代理母で子供を作ることも考えられますし、レズビアンなら提供精子という手段もあります。

生物学的な子供は作れなくても、家族として子育てはできる。新しい家族の姿をしっかりと描くことができれば、さらに見応えのあるドラマになるはずです。今後の展開に期待しています。

田口早桐(たぐち・さぎり)
産婦人科医、生殖医療専門医。1965年大阪市生まれ。1990年川崎医科大学卒業後、兵庫医科大学大学院にて、抗精子抗体による不妊症について研究。兵庫医科大学病院、府中病院を経て、大阪・東京で展開する医療法人オーク会にて不妊治療を専門に診療にあたっている。自らも体外受精で子どもを授かった経験を持つ。著書に『ポジティブ妊活7つのルール』『やっぱり子どもがほしい! 産婦人科医の不妊治療体験記』がある。
(写真提供=オーク銀座レディースクリニック)
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