松ケンの演技が素晴らしい理由

クリニックでの場面は、非常によく調べて作られていると思いました。伊藤かずえさんが演じる女医が提示する資料も、「タイミング法から人工授精、体外受精」という示し方は定番で、どこのクリニックにも共通するものです。

検査室もリアルで、深田さんが横たわっていた「経膣超音波検査」は必ず受けます。松山さんが、成人向けの雑誌やDVDが置かれた採精室(精子を採る部屋)に戸惑う姿もありましたが、あの部屋も再現度が非常に高い。というよりも、実際のクリニックで撮影しているのだと思います。

困惑の色を隠せない松山さんに対して、看護師役の方が淡々と受け答えしていましたが、レディースクリニックで働いていると、性に関する言葉を発することに恥じらいや照れはなくなります。「精子量が~」「セックスの回数が~」など町中でも普通に発してしまうなど、一般の人が思う「性的なもの」の捉え方から乖離してしまうので、反省するところでもあります。

一番リアルだと思ったのは、松山さんの演技です。精液検査の結果が正常だとわかった途端、松山さん演じる夫が「よし、やった」と反応します。これは男性のリアクションとして典型的なのです。精子が「正常」だとわかったらもう大喜びで、すべてから開放されたと思っています。その後は上の空で何も聞いていないんですね。妻のほうが「よかったね……」と冷たく反応するということがとてもよくあるんです。松山さんのお芝居はすごく自然で、上手いなと感心しました。いい役者さんだと改めて思いました。

一方で、ややリアリティにかけるなとと思ったのは女医の対応です。少し冷たい感じに、「検査しますか?」と念押しするような言葉を使っていました。実際のクリニックではもう少しポジティブに進めていきます。「では、検査しましょう!」と元気づけることが多いですね。ただ、このあたりは「五十嵐夫妻がショックを受ける」というドラマの演出だと考えれば理解できます。

深キョンの「女性の悩み」の演技に期待

五十嵐夫妻が、排卵日にあわせてセックスをする「タイミング法」をスタートし、松山さんが演じる大器が不妊への決意を固めるところで、第1回は終わりました。ドラマでも説明された通り、続いてフーナーテスト(子宮内での精子の状態を見るテスト)を行い、これから不妊治療が進んでいくのでしょう。