「名門復活」へ手探りの経営が続く

昨年暮れにJ.フロント、高島屋が発表した17年3~11月期連結決算はインバウンド(訪日外国人観光客)需要の戻りなどが寄与し、それぞれ好業績だった。最終利益でJ.フロントが前年同期比24%増の237億円、高島屋は同9%増の144億円と利益を伸ばした。両社ともにインバウンド需要が堅調に推移したほか、株高による資産効果から富裕層による高額消費の拡大も追い風となった。J.フロントはGINZA6の開業も寄与し、脱百貨店経営が実った格好だ。三越伊勢丹が希望退職募集により17年10~12月期に約43億円の特別損失を計上したのと対照的だ。

ただ、旺盛なインバウンド需要を取り込めるのは大都市部の旗艦店でしかなく、地方の店舗は苦戦続きだ。実際、16年の全国百貨店売上高は36年ぶりに年間6兆円を割り込み、百貨店はもはや大都市圏でしか生き残れない“絶滅危惧種”にも映る。それは「のれん」に頼るビジネスモデルが崩壊しつつあることを意味し、あくまで小売りにこだわる三越伊勢丹の中期計画に、株式市場関係者や業界関係者が冷ややかな目を向けるのもうなずける。実際、三越伊勢丹のほかセブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武も地方・郊外を中心に店舗閉鎖に動く。

百貨店によるネット通販も成功するかどうかは未知数だ。先行する米国ではアマゾン・ドット・コムの攻勢を前に、百貨店は活路を見出せていない。日本市場においてもアマゾン、楽天市場に加え、衣料品専門のネット通販の存在感は圧倒的であり、三越伊勢丹が新たなネット通販で確かな成長戦略を描けるかは不透明だ。名門復活に向けて手探りの経営を続けざるを得ない。

(撮影=宇佐見利明)
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