キャッシュカードの暗証番号は書かない

ノートを書くのは早い時期にこしたことはない。2015年の相続税の改正で、基礎控除が大幅に縮小され、課税対象者は増加している。

「財産が基礎控除をオーバーするようであれば、子どもの住宅取得資金や孫の教育資金の贈与など生前贈与を利用すれば、節税することもできます」

預貯金は一覧にまとめておかないと、まだほかにあるのではないかと、家族は探さなくてはいけなくなる。とくにネット証券など郵送による通知のないものは、手がかりがないので遺族は気が付かない場合もある。ならば、いっそのこと預貯金の欄に金額、キャッシュカードの暗証番号、通帳や銀行印もまとめておいてもらえれば、遺族にとっては便利なのだが、それは危険すぎると藤川さんは言う。

「残された家族には便利でも、万が一、盗まれた場合を考えるとまったくお勧めできません。相続する子どもたちも家のローンや教育費などで家計が苦しい世代。つい出来心で前借り。それが兄弟姉妹間の争いの種になってしまうこともあります。ですから、ノートには口座の一覧だけでいい。それさえわかれば、あとはなんとかなります」

葬儀や埋葬の希望も書き記しておいたほうがいい。多くの人が病院で最期の時を迎える現代、葬儀は病院に出入りしている業者に任せるケースも多い。

「残された家族は気が動転していますし、不慣れな手続きだらけでてんてこ舞い。業者の勧めるまま、亡くなった方も家族も望んでいない規模の葬儀をしてしまうこともあります」

死亡の通知をしてほしい親戚や友人のリストも忘れずに。最低限残すべき項目がわかれば、エンディングノートを書くハードルはぐっと下がる。

藤川 太
1968年、山口県生まれ。慶應義塾大学卒業。「家計の見直し相談センター」で15年以上にわたり2万世帯を超える家計の見直しを行ってきた。