書店員と営業が「大人にも受ける」と太鼓判

読者アンケートはがきは幅広い世代から届いた。

「書店員さんがこの本を実際に見て、『内容的に、子どもだけじゃなく大人が読んでも楽しいんじゃないか』と言ってくださり、書店の児童書コーナーだけではなく、お店入り口の目立つ場所や、話題書のコーナーといったところで、大人の目に付くような形で展開してくださいました。すると実際にやっぱり、大人の方も買ってくださって、今までの児童書にはないような売れ行きがそこで出たようです。そこはやっぱり営業の力が大きかったですね」(同)

初代の読者アンケートはがきは幅広い世代から届き、中には90代の夫婦からのものもあった。確かに文章は子どもにも読みやすいものになっているが、装丁や誌面のレイアウトは、一見、大人向けの本にも見える。これは「内容がちょっとゆるい感じなので、デザインは逆にポップさを排除して、ちょっと格調高い感じを意識した」(山下氏)ためだったが、結果的に大人も書店で手に取りやすくなったのではないだろうか。

続編は、大人が読むことも意識して編集した

こうして発売から7カ月たった2016年末、「続」の編集がスタートする。既刊が子どもをターゲットにしていたのと異なり、続編では大人にも読まれることを意識して編集作業に取り組んだ。とはいえ編集期間はわずか半年。すでに一定の売り上げが見込めると踏んだ同社は、発売と同時に新聞広告を出すことも決めていた。広告出稿のスケジュールは厳重に決まっている。ここに記載した発売予定日をずらすわけにはいかなかった。タイトなスケジュールの中で、最も長い時間を割いたのは“ネタ選び”だった。

山下氏が所属する書籍編集部第1課は、児童書のほか大人向けの実用書も作っている。山下氏はストレッチ本などの実用書のほか、折り紙や、あやとりなど“子どもの遊び系”の児童書は手がけたことがあったが、図鑑の編集に携わったことはなかった。続編をつくるにあたり、図鑑編集の経験のあるスタッフたちと協力し、まずは各ページの見出しとなるような「ざんねん」ネタをエクセルに記入。それを子どもだけでなく大人にも見せて、その反応を見ながらネタを選別していった。文章はスタッフ皆でもんでいく。

『続 ざんねんないきもの事典』では、大人にも響くネタを意識して盛り込んだ。

「(続では)大人たち、特に、子どものいるお父さんお母さんが読んでも満足感のある作りを心がけました。例えばちょっとマイナーな動物を入れて知識の幅を広げられるように、オオカミとか恐竜とか、絶滅種を入れたりもしているんですけど、有名な生き物たちの新しい一面を知れるような、大人でも新しい発見があるようにしています。大人と子どものアンケートの回答を見ると、子どもに受けるものと大人に受けるものって多少違いがあったりもしたんです。なので、大人たちに人気なネタをちょっと入れたりといった工夫をしました」(同)

初代には120種類の「ざんねん」ネタが盛り込まれている。続では、学術書や新聞などから集めた300種類の「ざんねん」ネタを候補として用意。国立科学博物館で哺乳類の分類学や生態学を学んだのち、上野動物園で動物解説員を経て、現在も動物の生態を研究している監修の今泉忠明氏に、内容について随時チェックしてもらい、最終的に115種類まで絞り込んで「続」に掲載した。たしかに「オシドリの夫婦はじつは毎年相手が違う」、「ウミガメはいつも泣いている」などといったネタは、仲の良い夫婦を表す際にオシドリを用い、産卵時に涙を流すウミガメの様子を、テレビで幾度となく見て来た大人たちにも響く。