「ピア・ツー・ピア」での事業構築

さらに「あしたの履歴書」としてメルカリに注目しているのは、同社の目標管理制度です。山田CEOがメルカリの「強固な組織づくり」の心臓部と考えているものです。

『日経ビジネス アソシエ』の2017年10月号において、「メルカリ流の働き方」が特集記事として掲載されています。その中核となっているのも、同社の目標管理制度兼人事評価制度OKRです。OKRとは、「Objective and Key Results(目標と主な結果)」の略称であり、米国ではグーグルをはじめとして、シリコンバレーの最先端企業が導入していることで知られているシステムです。実は、あしたのチームで提供している人事評価制度「ゼッタイ!評価」および「あしたの履歴書」もOKRのコンセプトをさらに進化させてできています。

メルカリでは、全社的にOKRを年に4回記入し、年俸額を決めるための人事評価は年2回実施しています。あしたのチームでは、「ゼッタイ!評価」のクライアント企業に年4回の人事査定を推奨し、自らそれを実行しています。年4回、つまりは四半期(3か月)ごとに全社的な目標管理を回していると、3か月が1年、あるいは1年で4年分の成長を遂げているような身体感覚をもつことができるようになります。「創業4年で時価総額1000億円以上」というメルカリの驚異的な事業スピードの源泉のひとつも、OKRとのその高速回転PDCAにあるのではないかと思うのです。

仲間とともに目標設定し、仲間とともに目標を実現していく。私たちは、仲間とともに仕事をしていく「ピア・ツー・ピア」での事業構築、「ピア・ツー・ピア」相互間の新たなコミュニケーションこそが、これから日本企業、そして日本のビジネスパーソンがAI時代の中で生き残っていくための大きなカギになると考えているのです。

田中道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。著書に『ミッションの経営学』など多数。