日本企業の「意欲」が低い要因

なぜ日本企業にはこうも多くの不満層がいるのか。日本企業に蔓延する構造的な要因について掘り下げていきたい。

まず挙げられるのが、従来の終身雇用、年功序列の弊害であろう。近年では崩れつつあるとは言え、依然従来の終身雇用モデルを前提としている組織も少なくない。過去には終身雇用が会社に対する強い帰属意識を生み出していた側面もあり、こうした制度を一概に否定するわけではないが、ネガティブな側面が大きく露見しているのも事実である。

人材の流動性が低いため、職場に満足していない社員は、意欲がなくても会社に居座り続ける。一方で、年功序列により昇進もほぼ横並びのため、頑張っても頑張らなくても評価は大きく変わらない。自身の貢献や意欲が公正に評価されなければ社員の意欲は削がれ、頑張らない社員を助長する結果につながりかねない。

二つ目は、会社に対する先行きの不透明さであろう。例えば、ベンチャー企業など業績が伸びている会社では、社員一人ひとりの顔つきも明るくやる気に満ち溢れているケースが多い。一方、業績が悪い会社では、社員の意欲を打ち消すような負のオーラが社内に蔓延していることが実際に多い。

こうした状況も踏まえて新卒学生の就職に対する意識の推移を見てみると非常に興味深い。マイナビの発表している2017年卒大学生の就職先を選ぶ際に重視する要素を見ると、15年前と比べて「やりたい仕事ができる会社」の割合が10%も低下し、逆に「安定している会社」の割合が10%上昇している(図3)。社員にやる気に溢れて仕事をしてもらうためには、職場に愛着を感じ、自身の仕事にやりがいを感じてもらうことが必要だが、それ以前に最低限の自身の職に対する「安心」という土台が必要なのである。

先行き不透明で、成長が見えない会社では、意欲を発揮できない。上記の大学生の就職意識調査からは、こうした最低限のジョブセキュリティに対する欲求が透けて見える。日本企業の成長を目の当たりにしたことがなく、多くの企業の没落を見て育ってきたミレニアル世代は、非常にシビアに会社の先行きを見定めているのである。