クラウドと組み合わせたIoTサービスへ

スクリーンコードの開発者は岸上の夫で、アポロジャパン創業者である顧澤蒼(コ・タクソウ)だ。中国出身の顧は、中国にも現地法人を設立し、スクリーンコードの普及を進めている。

「ScVoice」というアプリを開発、スマホをスクリーンコードにかざせば音声を再生する。

顧は、大阪府立大学で学位を取得後、1995年に中国天津市に天津アポロ電子を設立、東レが開発した複雑帳票組版「FXシステム」の技術開発を請け負った。このとき、発色のきれいなカラー合成技術を生み出した。この技術がスクリーンコードの土台となった。

2005年にアポロジャパンを神戸に設立し、ソフトの受託開発を始めた。当時、電子画像に情報を埋め込む電子透かし技術はあったが、印刷画像では不可能と思われていた。そこで、顧は挑戦し、2006年にスクリーンコード生成ソフトと読み取り用ソフトおよびデバイスを開発した。

その成果は複合機メーカーのセキュリティソフトに採用され、コピー禁止のコードを埋め込むために使われた。

スクリーンコードに関する技術特許の出願は計107件にのぼり、日本、中国、アメリカ、EUなどで申請している。

かつてアポロジャパンは業務用ソフトの受託開発がメイン事業だった。だが、2008年のリーマンショックで仕事が急減。自社製品の開発に舵を切った。

「自社技術で勝負するならいまだと考えて、神戸から東京へ進出しようとしたのですが、資金不足で東京の事務所を借りることができず、インキュベーション施設である横浜リーディングベンチャープラザに入居しました」(岸上)

現在、アポロジャパンのビジネスモデルとしては、スクリーンコードとクラウド、スマホを組み合わせたIoTサービスに転換しつつある。

「当社だけでは営業力も足りないので、信頼できるパートナーが見つかれば資本提携を結んで協力し合い、もっと世の中に役立つ利用方法を考えたいと思います」

見えないコードが世界をつなぐまで、アポロジャパンの挑戦は続く。

(文中敬称略)

株式会社アポロジャパン
●代表者:岸上郁子
●創業:2005年
●業種:スクリーンコード関連の読み取り機器、パッケージソフトなどの開発・販売
●従業員:5名
●年商:9470万円(2016年度)
●本社:神奈川県横浜市
●ホームページ:http://www.apollo-japan.ne.jp/
(写真提供=日本能率協会、アポロジャパン)
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