日本が世界に誇る物流網。だがトラックの積載率は20年前に比べて15ポイントも下がっている。荷室がスカスカのトラックが増えているのだ。どうすれば荷室のムダがなくなるか。梱包資材を扱う和歌山県のワコンが開発したのが、常温のコンテナでも保冷が可能な「サーモボックス」。その性能の高さから、現在は医薬品の「定温輸送」も手がけている。梱包から物流改革を進める中小企業の取り組みを紹介しよう。

箱ではなく温度を売る

日本の物流業界は、運賃の値下げ、ドライバーの不足などによって、苦しい状況に追い込まれている。だが、嘆いてばかりでは仕方がない。和歌山県に本社を置くワコン社長の西田耕平(51歳)は「日本の物流をよくすることが自分の使命」と語る。

西田耕平・ワコン社長

「常々、私は新聞配達のやり方はおかしいと思っていたんです。だって、1軒の家にそれぞれ違う販売店から新聞が届く。それは各新聞社が独自に販売店網を持っているからです。こんな非効率なことはない。販売店が自由に各紙を扱えるようにすれば、どれだけ無駄がなくなるでしょう。商流と物流を分けなければダメです。日本のいたるところで、同じようなことが起こっています。中でも物流は非効率の極みです」

国土交通省によると、2016年のトラック輸送の積載率は41%前後。これは20年前にくらべて約15ポイントも下がっている。物流は時代がたつと共に進化するどころか、非効率化が進んでいる。

ワコンは輸送用包装・梱包資材のプロとして、資材を製造、提供するだけでなく、貨物および荷主にとって最適で効率的・低コストの輸送法を提案する新しい業態の会社である。

扱う包装・梱包資材は、段ボールから、プラスチック製・木製・金属製・布製コンテナ、保冷剤、蓄熱剤、パレット、そのほか緩衝材・結束剤まで幅広い。ワコンは用途に応じてこうした資材を使い分けるだけでなく、オリジナルの包装・梱包機器や仕組みの開発まで行っている。

たとえば、ある自動車部品メーカーに対しては、3次元設計システムを使って、ミリ単位で無駄な空間を削ったオリジナルの包装機器を開発・製造し、10トントラックへの積載量を約3倍に増やし、輸送コストを3分に1に削減したという。

また、液晶パネルのメンテナンス会社には、パネル部品の輸送用コンテナを改良し、重さを10分の1に落とした。これによってトラックの積載量を大幅に増やすことができた。

さらにワコンでは、貨物の温度管理までシステム化している。西田は「箱を売るのではなく、必要な温度を提供するのが当社の仕事」と言う。たとえば医薬品は厳密な温度管理が求められる。このためワコンでは最適な温度帯で定温輸送できるノウハウを磨き上げてきた。

ワコンでは温熱解析シミュレーションソフトや保冷・保温用の「サーモボックス」を開発。保冷剤や蓄熱材、あるいは断熱材などを組み合わせて、貨物ごとに最適温度を作り出す。従来は冷凍食品の輸送に最適とされるマイナス18度の環境を実現するには冷凍車を使うしかなかったが、ボックスごとに温度を設定すれば、1台のトラックで、マイナス18度、ゼロ度、常温など何種類もの温度環境を作って運ぶことができるので、効率的だ。

2016年度の売上高は19億5000万円。過去4年間で約1.7倍に増えている。