だが、問題志向アプローチには弱点がある。「責任を問われるのでは」と恐れたメンバーが非協力的になり、活動が進まなくなることがあるのだ。「また、本来は手段であるはずの原因究明に終始し、それが目的化してしまう例も多いのです」(川西さん)。

人間関係がよくなり、人が育つ

一方、解決志向アプローチでは問題点を扱うが、原因追究をひとまず棚上げするので、メンバー全員が前を向きやすい。川西さんは、「問題志向アプローチも重要ですが、それだけでは不十分。解決志向アプローチと併用することで、大きな効果を得られます」という。

リチーミングには「楽観的な考え方が身に付く」「モチベーションが上がる」「人間関係がよくなり、人が育つ」という効果もある。売上高や生産性のアップといった数値化できる「有形効果」と違い、それらは効果が測定しにくいために「無形効果」と呼ばれる。しかし、川西さんは「リチーミングによる無形効果で組織の体質が改善されれば、自ずと生産性や売上高、品質も高まります」と指摘する。

リチーミングの流れは、図1のように12のステップからなる。とくにステップ1の理想像を描くまでのプロセスが大切で、ストレスを抱えたチームメンバーの問題を共有化し、心の浄化作用を高める必要がある。そこでサポートするのが、EAP総研が教育機関となり、フィンランドの機関から発行された資格を得たリチーミングコーチ。川西さんは「ワークに入る前に、お互いに忌憚なく意見をいい合うプロセスを共有していきます」という。

問題解決後の自分たちの理想像を思い描くためには、現状でどんな問題を抱えているのかを皆で洗い出す必要がある。それゆえ「メンバーから自分に対する不満が出ても、問題解決のきっかけなのだから責めない」という理解を徹底させて、耳の痛い話でもメンバー全員で受け止めるようにするのだ。