生産性連動賞与のススメ

IT企業大手のSCSKが、残業代が減った分は賞与で還元するしくみを導入して、話題になりました。紳士服大手のはるやまホールディングスは、月の残業時間がゼロの社員に1万5000円のNo残業手当を支給する方針を発表しました。

これらの施策により、社員にとっての残業削減に対する意欲は増すでしょう。しかし、企業にとっては、ちょっと心配です。労働時間と比例して、利益も減っては困るからです。

そこで、「生産性連動賞与」あるいは「業績連動型・残業代還元賞与」を提案したい、と思います。

たとえば、「労働時間を削減して残業代が減った分は、利益が維持できている限り、全額を賞与に上乗せします」といった制度です。会社にとっては、残業が減っても、仕事の生産性が上がって業績が維持できれば、問題ありません。社員の定着や採用にも好影響を及ぼすでしょう。ベースの月給を引き上げる方法もありますが、その後に残業が反転して増えるようなことがあれば、給与総額が高騰してしまいます。そのため、賞与で還元するのです。

ただし、どのように分配するかは、慎重に考えなければなりません。各人の残業代減少分をそのまま分配したのでは、もともと残業時間が多かった人の方が得することになります。一方、一律に分配したのでは、今度は残業削減しなかった人が得をすることになるからです。

<生産性連動賞与例>

1. 前期並みの利益(たとえば営業利益1億円)確保を前提として、時短により減少した残業手当総額(たとえば年間1000万円)を全額社員に賞与として還元する。利益が減少した場合でも、一定範囲内であれば、役員会により還元額を検討する。

2. 社員への配分方法は、
各人ポイント×単価(総額÷全社員のポイント総計)

3. 各人ポイントは、以下(1)~(4)の合計
ポイント(1):月平均の個人残業代減少額により、1万円=1P(増加者は0P)
ポイント(2):今期の個人平均残業時間により、20H以下3P 30H以下2P 40H以下1P
ポイント(3):個人ごとの生産性評価により、A評価2P B評価1P C評価0P
ポイント(4):所属部署ごとの生産性評価により、A評価2P B評価1P C評価0P
<(4)についてのみ、管理職にも×2倍のポイントを付与>

これは、生産性連動賞与の例です。社員ごとの時短や生産性評価をポイント化し、還元総額を各人のポイントに応じて分配するルールとなっています。

生産性評価については、部署ごとに指標や評価基準を設定することになります。ポイント(4)の部署ごとの生産性評価に限定して、管理職もポイント付与の対象としました。残業代減少の還元という意味では、管理職は対象外となるはずですが、チームの時短や生産性改善に対する意識づけのため、分配対象に加えています。