白熱する“駅伝業界”の未来とは

神大、順大は(1)(2)いずれもバランスよく展開したレース巧者であった。他方で駒大は2区と山登りで得たアドバンテージを、その他のポイントでため込んだ借金が超過してしまった。エース中谷圭佑の失速による影響は大きく、故障上がりの中谷をポイント区間に起用せざるを得ない選手層の薄さを露呈する形となってしまった。東海大は、往路の主要区間を任され、台風の目になると思われたルーキーの失速が苦戦の一因と言えるだろう。

上述の通り、今大会は特定の区間を除いてタイムが全体的に伸び悩んだ。従って、ミスの少ない堅実なレース運びの可否が、上位争いやシード権争いを決する分岐点になった。

近年、陸上競技ファンという枠を超えて駅伝ファンともいうべきジャンルが確立し、その源泉が箱根駅伝にあることは言うまでもない。箱根駅伝のOBたちが実業団などへステップアップする事で、人気の好循環が生まれている。いわば駅伝景気といえる。

昨今のマラソン競技の低迷に伴って、駅伝文化に批判的な意見も存在することは事実であり、逆に駅伝なくして日本の長距離はあらずという状況もまた事実であろう。今回の箱根駅伝が閉幕した後も、慶應大による長距離強化方針の発表があった。2024年の第100回大会出場を見据えているという。

奇しくもポスト東京五輪の年である。その前に横たわる2020年。今大会で活躍した選手たちの世代が、日本代表の主軸を担う可能性は高い。

積み重ねの先に栄光がある。

選手はもちろんのこと、原監督始め各大学の指揮官たちも、同じ夢を見ているのではないだろうか。

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