共和党vs民主党。既存の支持層とは異なる人々の登場がトランプ当確の番狂わせが起きた要因だが、プアホワイトの期待に応えられるのか?
勝利集会を開催したトランプ氏(写真=ロイター/アフロ)

米国プアホワイトと英国EU離脱派の「類似点」

世界が大注目する中、米国の大統領選挙が行われました。

結果は、トランプ氏の勝利に終わりましたが、米国はじめ、世界の従来のバランスが大きく変わりつつあることを痛感した選挙でした。

私は、ずいぶん昔の1984年の大統領選挙の時、留学中で米国にいました。親しいカナダ人の友人に誘われて、選挙当日の夜、共和党系の学生の家での小さな集まりに行きました。米国では、学生でもどちらかの政党の支持を熱心に行っている人が少なくなく、政治に真剣に向き合っているのに感心したものです。共和党支持者と民主党支持者が比較的はっきりと分かれていた時代です。

今回も民主党と共和党という2大政党の候補者の対決でしたが、これまでの大統領選とその流れや背景が大きく違っているような気がします。

皆さんもご存知のように、共和党は「保守」、民主党は「リベラル」という色彩が強く、共和党は主に富裕層、民主党は労働組合などを支持基盤としているという傾向があります。

もちろん、富裕層の中でも民主党支持者はいますし、労働者にも共和党支持者は従来からいました。しかし、比較的その対立軸ははっきりしているものでした。

しかし、今回の選挙では、ドナルド・トランプ氏の支持者は、従来の保守層というよりは、いわゆる「プアホワイト」と呼ばれる、繁栄や成長に取り残された白人層という傾向が強く出ています。これに関しては英国のEU離脱の国民投票と似た点があります。プアホワイトもEU離脱派も、現状に非常に強い不満を持っており、それを移民や経済政策などが原因だと考えています。

トランプ氏を支持した白人層は、雇用不安や社会保障の不安を持っている労働者階級が多く、本来なら民主党支持者のはずでした。工場で働く労働者が多いオハイオ州では民主党が従来から強いのですが、今回は共和党のトランプ氏が勝利しました。これまでの対立の構図とは大きく違っているわけです。

先ほど、EU離脱を決めた英国との共通点を述べましたが、大きな違いもあります。英国と米国では、社会保障のレベルが大きく違うのです。

英国はじめ欧州諸国は、手厚い社会保障で国民は守られています。一方、米国は、社会保障はあるものの、本来「低負担・低福祉」で、やっとオバマ政権時代に医療においては、「オバマケア」の皆保険制度ができました。

しかし、負担が大きく増えた人が多く、非常に不満が多いのも現状です。トランプ氏は見直しを主張しています。

こうした中、社会の繁栄に置いてきぼりを食った人たちは、本来、小さな政府を目指す、共和党を支持することは考えにくいのですが、それでも今回はトランプ氏支持に回ったのです。裏を返せば、それだけ、米国の情勢が変わり、目の前の社会の不満が鬱積しており、これまでの対立軸までも変えてしまったということなのです。この点では、英国でのEU離脱も同じです。