テレビと違う映画を作りたかった

【野地】三船さんとかカーク・ダグラスとかみんな出てきて。やっぱりNHKのようなテレビのものとはまったく違いますね。

【日比】いやあ、やっぱりね、映画を作りたかったんです、僕はね。テレビとの違いをこうなんだよって、映画ってこうなんだよっていうのを僕としては提示したかったですね。

【野地】それがあの写真なんですよね。

【日比】ああ、写真を動かして、なんか生きてる。1枚の写真を、多分映像だと、じっと高倉さんの顔を見て、頭の中に残るっていうことがないと思うんですね。でも、スチールだと「ああ、こういう表情をしてたんだ」っていうものが観客に残ると思うんですね。

【野地】やっぱり写真のほうが映像よりも画としては強烈ですよね。いや、僕は最初、本当、映像の名場面集でもいいと思った。でも、名場面集ではやっぱり賞は獲れなかった気がします。

【日比】そうです。映画としてはダメだと思いますね。ただのインタビュー集でもダメですね。カナダでは有名なある評論家がね、いいことを言ってくれました。「いろいろ視点があってよかった。その1つは、あなたが30年ニューヨークにいたから、もちろん高倉健の映画ではあるんだけども、あなたのジャーニーでもあるね」と。

【野地】『健さん』では、写真を何枚ぐらい使ってるんですか。選ぶの大変だったでしょうね。

【日比】えーとね、200枚ぐらいですね。やっぱり僕は、写真を常に見てるんで速いんです。今まで出した写真集とかも全部自分で編集してますし。そういうのがね、ほかの監督さんではちょっと難しいのかもしれませんが……。