世にまかり通る保険の常識の数々。しかし、それを信じると思わぬ落とし穴に入り込むことに……。そんな実は「非常識」なことを保険のプロたちがつまびらかにする。

一時払い終身保険

一時払い終身保険を元本保証だと思い込んでいる人は珍しくない。まず、銀行でも高齢者などに向けて販売している影響が大きい。一時払いなので加入時に保険料を全額払い込むのだが、「すぐに解約しても銀行が勧める商品だし、すでに払っている保険料くらいは返ってくるだろう」と考えてしまう。

しかし、それは大きな誤解なのだ。家計の見直し相談センター代表でFPの藤川太さんが、知り合いの高齢女性のケースを紹介してくれた。

「その人は一時払い終身に加入して、約5000万円の保険料を払い込んだのですが、まわりの人に『それって、詐欺じゃない?』と脅かされ、慌てて解約してしまった。その結果、数百万円も目減りして戻ってきたのです」

そのような元本割れを起こす理由は何かというと、保険料には、運用や保険金の支払いに充てる「純保険料」だけでなく、保険会社の経費を賄う「付加保険料」も含まれているからだ。

「付加保険料として毎年、一定の金額が、元本から差し引かれています。純保険料の運用益が出て、それが付加保険料を上回るようになるまで(その期間を元本回復期間と呼ぶ)は、中途解約すると、返戻金が元本を下回ります」と平野FP事務所代表でFPの平野敦之さん。

同じFPの畠中さんは、「ある大手生保の例では、50歳で保険料1000万円の一時払い終身に入ると、元本回復期間は4年です」と説明する。つまり、加入してから3年以内に解約すると、元本割れになるということだ。

「一時払い終身保険は、貯蓄性の高い商品ですが、あくまでも保険であって、預貯金ではありません。高齢者でも加入しやすい、相続税対策にもなるといった利点もありますが、投資として考えると、長期間資金を縛ってしまうので、必ずしも有利な商品とはいえないでしょう」と平野さんは指摘する。

藤川 太
「家計の見直し相談センター」代表。著書に『サラリーマンは2度破産する』など。
 
平野敦之
1998年に独立。生命保険から損害保険まで幅広くカバーする保険のプロとして活躍。
 
畠中雅子
1992年にファイナンシャル・プランナー資格を取得。新聞や雑誌に連載記事を執筆。