コツコツと仕事に没頭する職人肌のシングルタスク派こそ最後に成功すると思われてきた。しかし、業界を牽引するトップたちは皆、限られた時間でマルチタスクをこなす。本当のできる男とはどちらなのか? 脳科学が解明する。

器用にこなすマルチタスクは脳に悪影響?

愚直なまでに目の前の課題にのめり込むことで専門性を磨き、その業界のトップに立つ……。そんなシングルタスク派の職人肌の人こそ、最終的に成功を手にすると思われてきた。

それに追い打ちをかけるようにアメリカを中心に話題になっているのが、「マルチタスクは脳に負担をかけている」という議論。複数のタスクを短時間で器用にこなしていくことは多忙な経営者には必須スキルに思えるが、本当に効率がいいのはどちらなのだろうか?

愚直に黙々と……シングルタスク派は結果を残せる?

まず、実際に成功を収めてきた名経営者たちを例に考えてみよう。

たとえば、京セラの稲盛和夫。大学卒業後、一介のエンジニアとして入社した松風工業で、鍋や釜、七輪、布団を持ち込んで研究室に住み込み、朝早くから深夜まで実験に没頭した。その後、京セラを立ち上げたのも、自分の技術を世に問いたい、という一心から。つまり、シングルタスク派の色合いが濃い。

同じ匂いを感じるのがソフトバンクの孫正義だ。この人の集中力は半端ではない。憧れのカリフォルニア大学バークレー校に入るため、最大5時間の睡眠時間以外はすべて勉強にあてた。おかげで優秀な成績を収め卒業した。

(左)JAL名誉顧問&京セラ名誉会長 稲盛和夫氏(右)ソフトバンク代表取締役社長 孫正義氏

経営者になってからも、ソフトバンクの通信事業参入に際し、ADSL分野という、ベンチャー企業が群雄割拠する「局地戦」で実績を残す。そこから日本テレコムを買収して固定電話事業に参入、さらにボーダフォン日本法人の買収によって移動体通信事業を掌中にし、ソフトバンクを総合通信会社に成長させた。こうした局地戦を得意とするのは、シングルタスク派の証拠である。

そして、アップルのスティーブ・ジョブズだ。彼は「イノベーティブな製品づくり」というタスクに特化した経営者だった。営業やマーケティングを一段下に見た、唯イノベーション主義者だった。