自慢じゃないけれども、独身時代から子供が好きだ。しばらく前、東京・目黒にある高級レストランで食事をしていたとき、隣の席で子供が泣きやまなかった。若いお母さんが困り果てたのを見て、ついちょっかいを出してしまった。「私に抱かせてください」と言いながら、手を差し伸べ、子供を抱っこした。そこで奇跡が起きた。子供は泣くのをぴたりとやめてくれたばかりではなく、私とじゃれ始めた。同行の仲間たちも、若いお母さんも拍手してくれた。私もちょっぴり鼻を高くした。

ここまで子供が好きだから、本書を読み始めたら、自然に子供に関連する福利厚生制度が充実している会社の話に目がいく。

水戸市に本店を構える茨城県信用組合は1950年に設立、職員数が約1400名と信組としては日本最大規模を誇る。この信組はかなり思い切った出産祝い金制度を設けている。第一子のお祝い金として20万円を贈る。第三子の場合は100万円、第四子は200万円、第五子はなんと300万円となっている。

子育て支援策を検討していたとき、月に5000円の手当を仮に20年間支給するとしたら120万円になるが、それなら出産時に100万円支給したほうが職員に喜ばれるのではないか、と当時の理事長が発案したそうだ。

すでに第三子の100万円から第五子の300万円まで受け取った職員がいる。そのニュースがNHKで全国放送されたほど、注目を浴びた。

もう1つの会社も素晴らしい。2005年創業の化粧品会社ランクアップだ。創業者の岩崎裕美子さんは結婚したてのころ、出産後の会社の対応などについて上司と相談しても埒が明かなかったという経験を持つ。そこで岩崎さんは、子育てをしながら仕事ができる、残業しなくてもいい会社をつくってしまった。

売上高が約70億円で利益率も優れた同社はベビーシッターの活用促進として、その経費負担をしている。

子供は高熱を出しやすい。熱が下がっても保育所はすぐに預かってくれないから、社員はそのため、何日も仕事を休まなければならない。そんなときに、ベビーシッターを頼めたら、社員が安心して出社できる。ベビーシッターの利用料がかなり高いのを考えて、社員は1回300円の負担で何度も利用できるという制度を設けた。

子育てしやすい環境ができたから、同社の子育て中の社員の半数がベビーシッターを利用している。社員の出産率が50%で、復職率が100%という数字は何よりもこの制度のすばらしさを雄弁に物語っている。

少子高齢化は日本だけの問題ではなく、中国でも深刻な問題になりつつある。これらの日本企業の努力は中国にとっても大変参考になる。