ネット上で、攻撃的なコメントや批判が殺到するいわゆる炎上の問題。ネットで書き込みをしている個人ユーザーだけでなく、企業経営者等にとっても、頭の痛い問題だろう。ネット炎上が、会社の評判や信用の低下につながるのではという懸念を多くの企業が抱いているからだ。

本書は、そんなネット炎上の実態について、可能な限りのデータを集めて分析を行った今話題の本だ。今までもネット炎上に関する書物がなかったわけではない。が、本書でも指摘されているように、その多くは断片的な情報や少数のケースをもとに語られてきた。それに対して本書は、データの収集を行ったうえで経済学者が定量的な実証分析を行って議論を展開している点に大きな特徴がある。

導き出された結果は、かなり驚くべきものだ。炎上に参加している人はネットユーザーのわずか0.5%、しかもその大半は一言つぶやくだけであり、攻撃的なコメントを繰り返す人はさらにごく少数だというのである。

これは、多くのネットユーザーにとって、そして企業経営者にとっても、かなり重要な結果だろう。通常は、ネット炎上すると、その勢いに気圧されてしまう。特にそれに関連した企業等は、それを世論の声のように受け止め、評判低下の危機と深刻に考えがちだ。

もちろん企業不祥事等の結果生じた炎上は、それを世間の声として真摯に受け止めるべきだろう。

しかし、そうではない場合に、ごく一部の人たちによる過剰反応ともいうべき行動で炎上が起きているのだとすれば、それに対してとるべき対処策も当然変わってくると考えられる。

とはいえ、わざと炎上させて話題をとる、いわゆる炎上商法を目論む人以外は、無用な炎上は避けたいと思うだろう。その点については、本書の前半で語られている炎上の分類が大いに参考になる。

ここでは、炎上を起こす事例や典型的なパターン等が紹介され分類されていて、ある意味で書き込みの失敗事例がうまく整理されている。これらをきちんと読むことで、避けられる炎上もかなり出てくるのではないだろうか。

本書全体を貫いているのは、本来自由で建設的な言論を可能にするはずだったインターネットの世界が、なぜこんなことになってしまったのかという疑問であり、どうしたらよりよい言論空間が実現できるかという問いかけである。

ネット炎上が頻発するようになると、人々はネットを通じた情報発信や意見の表明を控えるようになってしまう。これは社会にとって大きなマイナスだと著者は訴える。そして炎上を防ぐサロン型SNSの導入等も提言していて、この点も注目である。