訪日客獲得のための「おもてなし」には、勘違いもよく見られます。

●「お膳立て」のしすぎ

インバウンド対応の代表例に「ファムトリップ」があります。海外の旅行会社、メディア、ブロガーなどを日本に招き、地元を見て回って、ツアーを企画してもらったり、メディアに取り上げてもらったりします。

その際、ありがちなのは、各地域の「これを見てもらいたい」「あれを食べてほしい」と要望を寄せ集めた「お勧めコース」をつくってしまうパターンです。その結果、どこに行っても、毎晩刺し身が出て、飽きられてしまい、みんなたまらずマクドナルドに駆け込んだという笑い話のような話も実在します。

飛騨古川では、何気ない里山の風景の中を自転車で走り、田んぼでカエルを発見したり、地元の人々と立ち話をしたりする「里山サイクリング」が欧米の旅行者に人気です。観光資源は意外なところに眠っているのです。

やまとごころ社長 村山慶輔氏

●受け入れ環境を気にしすぎ

インバウンドへの対応というと、これまで外国人観光客を受け入れた経験のないところでは、「言葉を話せる人を用意しなければいけない」「免税対応をしなければいけない」……と、環境の整備を先に行わないと、受け入れられないと考えがちです。

ある地方の施設が最近、環境整備が先だと、免税の認可をとり、商品の表示法もあれやこれやと検討した。しかし、ふたを開けてから1カ月間、訪れた外国人観光客はゼロでした。

大切なのは、集客が先だということです。日本人は接客レベルが高いので、目の前に外国人観光客が来始めたら、スイッチが入り、何とか満足してもらおうと必死に考え、改善が始まります。

実際、同じチェーンのお店でも、受け入れのスイッチが入ったところは外国人観光客が大勢来ています。最初の1人目をどう獲得するか、そこに全神経を集中すべきです。

個人客化とともに加速するのが「リピーター化」です。その需要を継続して取り込むにはどうすればいいのか。