「やりたい若者」に対し「やめとけ」という現状

【弘兼】農家には「先祖代々の土地」という思い入れもあり、なかなか借り受けが進まないとも聞きます。

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すでに組合員の過半数は農家ではない

【金丸】私が農業ワーキング・グループの座長になるということで、社内に知恵を求めようと実家で農業を営んでいる社員に話を聞きました。結構いるんです。「農業を継いでくれとはいわれなかったのか」と聞くと、「親には『農業は自分の代でいい』といわれた」と。JAバンクの教育ローンでいい大学に通い、ITコンサルタントになる。そのほうが収入は安定しているわけです。

【弘兼】家族のなかにすら後継者がいないのであれば、ほかの地域から来ることは望めませんね。

【金丸】規制改革会議に若手の就農者を招いたところ、こんな話を聞きました。市役所や農協に相談しに行ったところ、「農地がないからやめたほうがいい」「有機栽培は前例がないから無理です」と冷たくあしらわれたそうです。やる気のある就農者や有機栽培も旧態依然とした閉鎖的なこの扱いでは弾かれてしまう。

【弘兼】わざわざ「やりたい」といっているのに、冷たいわけですね。

【金丸】ほかの業界では志望者は手厚く扱われます。たとえば私の会社に「ITスキルはないけれど、やってみたい」という人が来れば、「やる気があれば大丈夫」という話になる。

【弘兼】どんな業種でも、新人教育のプログラムがあります。しかし、若者やヨソ者を受け入れる発想が乏しいわけですね。

【金丸】規制改革会議での議論に参加して、農業関係者の多くが過去にこだわり未来を見ていないことに危機感を持ちました。グラフを見れば右肩下がりのダウントレンドは一目瞭然です。飛行機であれば、ここで操縦桿をグッと上げなければ地面にぶつかってしまう。過去の話、いまの利権にこだわっている限り、未来は描けません。未来の若者に未来の農業を託すために、いま何をすべきか。未来の視点を議論の軸にしなければいけません。