【田原】パーソナライズされたニュースはダメですか。

【鈴木】僕自身は、とても興味があります。でも実際にサービスを出してみると、そっちが好きな人は1%くらいしかいなかった。ほとんどの人は個人的な関心より、世間のみんなが関心を持っているニュースを知りたいようです。

【田原】そうですか。

【鈴木】みんなパーソナライズされたニュースの価値を暗黙的には認めているんですよ。フェイスブックが流行ったのも、友達の最新情報が流れるから。ただ、明示的に「これはパーソナライズされたニュースです」と言うと、途端に反応が鈍くなる。

【田原】その反省に立って新たにつくったのが、スマートニュースだった。

【鈴木】マーケットを考えたというより、自分たちが便利だと思うものを素朴につくっただけです。ただ、パーソナライズをやめて、世の中一般の人が知りたいと思うゼネラルニュースにしたのはたしかです。

【田原】ゼネラルに舵を切ったのはどうしてですか。パーソナライズばかりだと、自分の興味のある分野しか見なくなって視野が狭くなる「フィルターバブル」が起きると言われていますね。

【鈴木】フィルターバブル問題を指摘したイーライ・パリサーは、フィルターバブルが民主主義の基盤を壊すと言っていて、僕も彼の主張には一定の根拠があると思っています。自分の興味、関心を深く掘っていくことは大事だけれど、一方で視野が狭くなりすぎるのもリスクがある。スマートニュースは、ユーザーに発見を提供することでフィルターバブルを打開していきたいです。

【田原】じゃあ、これからもゼネラルニュースに特化していく?

【鈴木】そこはバランスで、今後はパーソナライゼーションを入れていくことも考えています。食事も毎日ラーメンとかカレーだと、栄養バランスが偏ってよくない。ニュースも同じで、世界の裏側から身近なところまで、適切なバランスがいいなと。

【田原】これは最初に聞いておくべきだったけど、スマートニュースはどうやって儲けているのですか。アプリは無料ですよね?

【鈴木】はい。ユーザーは無料で、広告でお金をもらっています。

【田原】ニュースは取材しているわけではなく、他のいろんなメディアから引っ張ってくるわけですよね。メディア側にお金は払ってるんですか。

【鈴木】メディアの考え方に合わせて個別にやっています。たとえばある程度のトラフィックがあるメディアに関しては、専用チャンネルをつくってもらって、その面の広告収益の40%を還元しています。