2016年2月23日(火)

薬物から立ち直るにはどうすればいいのか

PRESIDENT 2016年3月14日号

著者
松本 俊彦 まつもと・としひこ
精神科医

松本 俊彦国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部部長。医学博士。1967年生まれ。93 年佐賀医科大学医学部卒業。横浜市立大学医学部附属病院などを経て、2015年より現職。近著に『よくわかるSMARPP あなたにもできる薬物依存者支援』。

精神科医 松本俊彦=答える人 小泉なつみ=構成
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「仕事中毒」の人が覚醒剤にハマる理由

元プロ野球選手の清原和博容疑者が今年2月、覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されました。著名人の薬物乱用が発覚すると、日本では激しく非難されます。しかし「刑罰」だけでは問題は解決しません。いま清原容疑者に必要なのは「治療」です。

薬物依存症の患者は、誰もが「薬物をやめたい」という気持ちは持っています。ただ、その気持ちはとても揺れやすく、ささいなきっかけで欲求に飲み込まれてしまう。それは「本人の意志の強弱」とは関係ありません。薬物依存という「病気」では、脳が依存性薬物にハイジャックされ、自分の意志や行動は薬物にコントロールされてしまうからです。

薬物依存はかつて「薬物中毒」と呼ばれていました。「中毒」であれば、薬物という毒を出せば完治します。しかし「依存」は、体内の薬物を抜いても治りません。むしろ一度でも薬物を使うと、脳の構造が書き換えられてしまうため、生涯、薬物を避け続ける必要があります。というのも、目の前に薬物を置かれたとき、未使用の人は何も感じませんが、使用経験のある人は絶対に我慢できずに使ってしまうからです。

薬物の怖さは物質そのものに依存性がある点です。ギャンブルやゲームなどでも依存症になりえますが、「1回でも手を出したら生涯その快感が忘れられない」というものではありません。むしろ多くの人は、依存症にならずにギャンブルやゲームとつきあっています。ところが薬物の場合には人を「依存症に引き込む力」が強く、経験者の多くが「やめたくても、やめられない」となるのです。この点では、たばこやアルコール飲料、カフェインにも同じような強い依存性が備わっています。

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