2016年2月19日(金)

わが家の鍋の素は大丈夫か「体にイイ鍋、ヤバい鍋」

買い物カゴ覗き隊が行く【6】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
佐藤 秀美 さとう・ひでみ
学術博士(食物学)、栄養士、日本獣医生命科学大学客員教授

横浜国立大学を卒業後、9年間企業で調理機器の研究開発に従事。その後、お茶の水女子大学大学院修士・博士課程を修了。専門は食物学。複数の大学で教鞭をとるかたわら、専門学校を卒業し、栄養士免許を取得。著書に、『栄養こつの科学』『おいしさをつくる熱の科学』(いずれも柴田書店)、『おいしい料理が科学でわかる―日本型健康食のすすめー』(講談社)、『新西洋料理体系第4巻 調理のコツと科学』(共著、ディック社)、『食品学I』(共著、同文書院)、などがある。最新刊『健康診断前2週間で検査数値を改善する本』(自由国民社)が出たばかり。

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栄養士 佐藤秀美=文
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塩分を増やさず鍋の「うま味」を飛躍的にあげる!

私は買い物カゴ・ウォッチャー。カゴの中身を覗けば、その人の食生活や健康状態がおおよそ推測でき、食生活の改善ポイントが見えてきます。

温かい鍋が恋しい時期ですね。

ある日のスーパーで、「鍋の素(スープ)」商品がたくさん並ぶ棚の前で、商品を選びかねている主婦を見かけました。見れば、買い物カゴには、鶏もも肉や白菜、大根など。どうやら、今晩は鍋のようです。

それならば、「鶏むね肉のひき肉もカゴに入れ、健康に役立つ美味しい鍋にしたらいかが?」と声をかけたくなりました。

鍋料理の美味しさは、ダシのうま味で決まりますが、最初は水であっても構いません。煮ている間に、肉や魚からイノシン酸、また野菜からグルタミン酸というように、うま味成分が具材から水に溶け出します。この2つの成分が合わさるとうま味が格段に強まるため、水から具材を煮ても、最後にはうま味の効いた立派なダシになるのです。

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味に対する本能による反応

ヒトの臓器は日々新しく作りかえられるため、その原料となるタンパク質を摂らなければ、生命を維持できません。タンパク質が豊富な肉や魚などにはうま味の元となる成分がたくさん含まれています。「うま味は好ましい味」と、生まれた時にはすでに脳にインプットされているので、ヒトは肉や魚などのタンパク質食品を好んで食べるのです。

実際に、生まれたばかりの赤ちゃんにうま味をなめさせると心地よい表情を示すことが、色々な研究で確かめられています。よりダシのうま味が効いている鍋料理のほうが脳は喜ぶのです。

ウォッチ(1)「鍋の素」より「鶏むね肉」です

鍋の素を選んでいた主婦は、鶏ガラなどでダシをとるのが面倒だったか、あるいは今晩は自家製ではなく市販スープを試してみようか、などとお悩みだったのでしょう。

このような人にとって、鍋の素は心強い味方です。しかし、塩分量が意外に多いので注意が必要です。いずれの商品も1人分の塩分量は3g~4g(小さじ1杯弱)ぐらい。これは1日に摂取できる許容量の約半分に相当します(男性8.0g未満、女性7.0g未満;2015年版日本人の食事摂取基準、厚生労働省)。言うまでもなく、塩分の摂り過ぎは高血圧の原因になります。市販スープに慣れて、塩分の多い「濃い味」でないと満足できなくなってしまうと危険です。

ただ、鍋に投入される野菜にはカリウムが入っています。カリウムは塩分の排泄を促す働きがあり、高血圧の予防に役立つことが明らかにされています。とはいえ、冬場は寒さで高血圧を発症しやすいので、減塩を心がけることは「転ばぬ先の杖」となるはずです。

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