「人づくり」を改めて考える

だいたい球界の「人づくり」はどうなっているのか。清原容疑者は“たまたま”なのか。もっと相談できる仲間がいれば、厳しく接してくれる先輩がいれば、寂しくなければ、今回のようなひどい転落はなかったと思う。

そこで、今回の再発防止策を考える。まずは検証である。野球界を代表する選手の不祥事なのだ。なぜ、こうなったのか。現役時代から、その兆しはなかったのか。引退して7年。「関係ない」では済まされまい。

今回の事件がどれほど子どもたちの夢を壊し、球界のイメージダウンにつながったのか。昨年の巨人の「野球とばく問題」しかり、である。事件を重く受け止め、経緯をつまびらかにし、「他山の石」とする必要がある。

その上で、どうすればいいのか。法を犯した者への「一罰百戒」はともかく、球界にはどういった仕組みが必要なのか。2月9日、筆者が講師を担当する大学の授業で学生と一緒にディスカッションしてみた。

プロ野球界、球団が日ごろから、薬物検査を実施し、その兆しを摘む。第3者機関を設置して、「ドラッグ撲滅」「野球とばく撲滅」を徹底する。チームには、セラピストや心理カウンセラーを置いて、選手の心のケアを図る。「小学校の保健室の先生のような存在がほしい」との意見も出た。

その他、球団の選手の関係をもっと濃くする。引退後もなんらかの関係を維持する。選手の年俸、財産管理をサポートする会計士、税理士を準備する。日本野球機構(NPB)、選手会は警察側と協力し、「暴力団排除」「ドラッグ排除」「とばく排除」の仕組みをつくる、といったところだった。

学生の意見を聞きながら、プロ野球選手は社会の憧れ、模範であるとの思いを改めて強くした。ならば、選手、OB、関係者には自覚と責任が求められる。確かにプロ野球は「勝利至上主義」でもいい。でも、桑田さんが高校野球などに提唱されている「人材育成主義」の側面も必要ではないか。

やはりスポーツは仲間作り、スポーツは人が大事なのである。そう、信じたい。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
(AFLO=写真)
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