【田原】その時点で緩まないネジのアイデアがあったということは、考えたのはもっと前?

【道脇】はい。18か19のころ、中古車を運転して友達の家に向かっていたら、突然ハンドルを取られたことがありました。バーストしたのかと思った瞬間、黒い物体が車を追い越していった。よく見たら、愛車のタイヤです。あとで調べたら、タイヤをつけていたネジが緩んで過負荷になり、ボルトが折損したことがわかりました。これは危ないと思って、緩まないネジを考えました。

【田原】先程構造をお聞きしましたが、正直、難しくてよくわからなかった。まわりの人は理解できました?

【道脇】いえ、やはり難しいみたいですね。平面図で説明しても理解してもらえなかったので紙粘土で立体模型をつくったのですが、ますますわからないと言われました。困ったのは、試作品の製作です。あちこちの金属加工メーカーに頼みましたが、「どうやってつくるのかわからない」と断られまくって。最終的に支援者の方に工場を紹介してもらってサンプルは完成しました。

【田原】創業は2009年。そこからは順調のようで、各所で評価されて賞を取っている。

【道脇】創業した翌月に、日本MITエンタープライズ・フォーラムで賞をいただきました。それから経済産業省の支援事業に採択されたり、東京都のベンチャー技術大賞もいただいています。

【田原】それだけ期待が大きいのでしょう。現状はどうですか。製品化は進んでいますか。

【道脇】機械加工で完成品をつくることは可能ですが、量産技術は目下取り組み中です。L/Rネジはボルトに特徴があって量産するのが難しいのですが、金型や工作機械も自分で発明して、大量生産できるようになりました。ただ、ナットのほうがまだできていない。2014年、産業革新機構や三菱UFJキャピタルから出資を受けましたが、資金は量産化技術の開発に活用しています。

【田原】海外からの引き合いはどうでしょう?

【道脇】ターゲットは日本ですが、海外からの問い合わせも多いですよ。まだ形になったものはありませんが、呼ばれてアメリカにプレゼンをしにいったりもしています。あとは韓国と中国ですね。