教科書は1週間でぜんぶ理解できた

【田原】道脇さんは小学校も中学校も途中で自主休学されたそうですね。

【道脇】生意気な話ですけど、学校の勉強が簡単すぎてつまらなくなったのです。新学年が始まると最初に教科書をもらいますが、だいたい1週間もすると、ぜんぶ読み終わって理解しちゃう。そうすると、もうやることがないので。

【田原】道脇さんは、おじいさんが数学者、お母さんが物理学者、お父さんが化学メーカーの研究者で、いわば学者一族です。ご家庭で何か特別な教育を受けていたのですか。

【道脇】いや、家で勉強した記憶はほとんどありません。教科書も教室に置きっぱなしで、予習や復習をしたこともないです。

【田原】本当ですか。僕は予習と復習をしないと授業についていけなかったから、ちょっと信じられない(笑)。

【道脇】自分で考えることが好きだったのです。たとえば足し算と引き算がありますよね。普通は足し算を練習して速く計算できるようになっても、引き算ができるようにはなりません。でも僕は引き算のやり方を自分で考え出した。

【田原】勉強でも発明していたわけだ。

【道脇】そうですね。自分で考えるから、先生から教わらなくてもできたんだと思います。ただ、日本の教育システムは早くやり終えても先に進ませてくれません。その結果、授業中、友達にちょっかいをかけて、授業の邪魔をするようになる。先生から見たら、問題児だったでしょうね。

【田原】あ、そこは少しわかる。僕も中学生のころは授業が退屈で、先生に意地悪な質問をして困らせたりしていたから(笑)。それで、休学した直接のきっかけはあったの?

【道脇】具体的に何かあったわけではないのですが、10歳で行くのをやめました。日本の学校は、上の人に言われたことを100%上手にこなす人間をつくる教育です。アメリカに追いつき追い越せの時代はそれでよかったのでしょう。でも、僕はこれからは独創性の時代になると思った。このまま学校にいると自分という素材がダメになる気がして、行かなくなりました。