突然、オーストラリアの与党自由党で党首交代劇が起こり、ターンブル新首相が登場した。大の親日家だったアボット前首相とは対照的に、新首相は政界きっての中国通だ。新首相の息子の妻は、元中国社会科学院の国際法研究者の娘。また本人も1990年代、中国河北省の炭鉱ビジネスに投資した経験を持つ。今年8月の豪中ビジネスウイークにおける演説では、「中国が対日戦争でともに戦った同盟国であることを忘れない」と持ち上げている。

オーストラリア首相 マルコム・ターンブル(AFLO=写真)

記者、弁護士、米金融大手ゴールドマン・サックス幹部、共和制運動の指導者を経て、2004年に連邦議員に当選して政界入り。豪州長者番付に載るほどの大富豪だが、排出権取引や同性婚を支持するリベラル派で、庶民層の人気も高い。前首相が経済政策の失敗で支持率を低迷させると、党首選を提案して政権の座を奪い取った。その戦略眼と決断力には定評があり、2016年の総選挙で与党が勝てば、長期政権の可能性もある。

当面は経済再建の手腕が注目されるが、気になるのは中国との距離感だ。中国メディアは「糖包(タンバオ=ターンブルの発音に似ている)」の愛称で彼の親中ぶりを喧伝している。中国の「海洋覇権主義」を牽制する日米安全保障の枠組みに負の影響を与えるとは考えにくいが、南シナ海岩礁埋め立てに対して直接の批判を避けるなど、中国への配慮が目立つ。「現実的で実利的」と評される性格が、対中経済をより重視する政策を取らせる可能性もある。日本の外交にも調整が迫られるだろう。

オーストラリア首相 マルコム・ターンブル
1954年生まれ。弁護士や投資銀行家などを経て、2004年連邦議員に初当選。08年野党自由党党首就任、09年党首選敗北。15年9月党首選を制し、首相就任。