日本車の国内販売が総崩れの中、独メルセデス・ベンツの快走ぶりが際立つ。昨年の販売台数は6万台を超え、2年連続で過去最高を更新。今年1~8月累計でも4万台を突破し、長年トップを走る独フォルクスワーゲンを追い抜く勢い。「ハードルが高い」というベンツのイメージを変え、日本のファンを増やした功労者が上野金太郎社長だ。

メルセデス・ベンツ日本社長 上野金太郎(AFLO=写真)

2013年の社長就任以来、次々と斬新なアイデアを繰り出してきた。たとえば、若い人にも買ってもらえるよう、小型サイズの車種を充実させる。子ども連れや若いカップルが多い商業施設などでひんぱんに展示会を開催。独本社の反対を押し切って、東京と大阪に型破りのショールームを開設。展示車の隣にカフェが併設されているが、肝心の販売員はいない。「伝統と安心感」のブランド価値を守りながらも、既成概念を覆すような人気アニメのCM動画も制作し、目線を下げた戦略に挑む。

小・中学校は都内のインターナショナルスクールで学んだ。得意の英語力で「外資系企業」を志望し、メルセデス・ベンツの日本法人に初の大卒新入社員として入社する。営業や広報、通関手続きなど多くの現場を経験し、初の日本人社長に就任した。海外メーカーの日本法人では、「生え抜き社長」は珍しい。

「今年は日本でエンジン革命が起きる」と宣言し、国内初のクリーンディーゼルのハイブリッド車を投入して話題を集めた。28年間ベンツ一筋で歩んだ「日本人社長」の次の一手に、業界中が注目している。

メルセデス・ベンツ日本社長 上野金太郎(うえの・きんたろう)
1964年、東京都生まれ。87年早稲田大学社会科学部卒業後、メルセデス・ベンツ日本に新卒採用1期生として入社。2007年副社長、13年社長就任。