一方、残業を減らすには業務の整理や効率化が必須である。SCSKには数百~1000人を超える社員から成る事業部門が8部門。具体的な業務効率化の取り組みは各部門で役員層が実行主体となり進められた。

「残業半減運動を実施した際、各部署で効果が高かった取り組み施策は『業務の見直し 負荷分散』でした。多忙なプロジェクトへの人員投入や組織統合による業務の集約、業務のアウトソースなどです。これはマネジメントの基本で、特に目新しいことではないのですが」(山口室長)

目新しくはないが、権限を持つ責任者がきちんと自部門を見ることで、業務の見直しや適正な人員配置が可能になったといえる。

こうした取り組みに対し、当初は「残業が減ると収入も減ってしまう」という社員の懸念もあった。そこでスマチャレをスタートする際、残業削減で浮いた残業手当はすべてインセンティブとして賞与で還元することを約束。社員の懸念を払拭するとともに、働き方改革が単なる経費削減策を目的とした取り組みではない姿勢を示した。

以上のSCSKの働き方改革は、どんな成果を生み出したか。まずスマチャレの目標であった「年間有給休暇の取得日数20日、月間平均の残業時間20時間以下」は14年度に達成。そして残業時間の減少と軌を一にするように、メンタルヘルス不調を理由に休職した社員は10年の52人から14年は28人に減少した。精神科産業医の選任やカウンセリングルームの設置といった施策も同時に行ってきた。

この間、業績は増収増益を続けたうえに、社員意識調査で「今後も働き続けたいと思う」人が12年度の76%から14年度は87%にアップ。「仕事とプライベートの調和を実現できている」人は67%から80%へと上昇し(社員意識調査より)、社員満足度が向上している。社員が働きやすい環境をつくれば生産性が高まり、企業価値も向上するという出発点からすると、狙い通りの成果が得られている。