「俺の」原価計算

食材や飲料にかけるコスト、すなわち「原価率」について、もう少し見てみましょう。メディアで見かけた方も多いかと思いますが、数年前から「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」といった店が注目されています(ちなみに企業名は「俺の株式会社」)。名物メニューである「牛ヒレとフォアグラのロッシーニ」という一品は、売価が1000円台前半ですが、噂では原価率90%とも言われています。同店の原価率は平均しても60%を超えるとされていて、それが人気の理由になっています。

利益率を重視するのではなく、お客を高回転させることで、トータルの利益額を確保するというのが同社の方針ですが、ここではその是非については触れません。注目したいのは、特に目玉商品に対して、教科書的な原価の「30%ルール」をまったく無視したことが、大ブレイクのきっかけとなったということです。

ちなみに、同店に限らずこうした圧倒的なコストパフォーマンスの良さを感じさせるというのは、最近の飲食店の定番の手法です。グラスからこぼれるくらいにスパークリングワインを注いだり、お客がストップをかけるまでイクラを皿に盛ってくれたり、鶏の唐揚げがたった100円で食べ放題だったりと、各店ありとあらゆる「お得感」でお客を惹き付けようとしているのです。