絶対に必要なのはアウトプットの場

英語学習というプロジェクトをマネジメントするのだと考えてほしい。ゴールセッティングができれば、品質・納期・コストも自ずと決まってくる。

ソフトバンク時代の私の場合は、「社長のフォローアップが英語でできるようになる」というゴールがあった。品質は「交渉で負けない英語」であり、納期は1年後、かけられるコストは月に数万円と早朝の数時間や通勤時間のみ。趣味のような勉強をする余裕は一切ない。

例えば、単語や文法。ビジネス交渉で使う英語を身につけるためには、いまさら覚えるのは時間の無駄である。高校までにインプットした単語と文法で十分すぎるぐらいだからだ。

オックスフォード大学出版局は、日常会話で頻繁に使われる3000語を「The Oxford 3000」として公開している。中学・高校で学んでおり、英語学習を再開すれば自然と思い出す基本単語ばかりだ。孫社長のある英語スピーチを調べたところ、93%はこの3000語でカバーされていた。残りの7%は「アントレプレナー」などの日本語でもわかるビジネス用語だった。

発音も捨てたほうがいい。成人してから外国語の発音を正確に覚えるのは極めて難しいからだ。少々発音が悪くても相手は文脈で聞き取ってくれる。発音を気にしているゆとりは私たちにはないと割り切ろう。

テキストは自分の目的に合った薄めのものを厳選して選ぶのがポイントだ。分厚いテキストは要注意。なかにはページ数を埋めるためなのか、同じ意味の内容を複数の言い回しで紹介しているものもある。「会議を始めましょう」と言うのに「Let's get down to business」と「Let's start the meeting」の2つが載っていたりする。どちらかに絞り、自然に口に出せるまで練習するべきだ。

大事なのはインプットではなくアウトプット。The Oxford 3000の単語を並べ替えて、適切な状況とタイミングで話せるようになることだ。

もちろん、単語や言い回しが豊富で文法や発音が正確なのに越したことはない。しかし、それは1年後に最低限のビジネス英語が使えるようになってから余力で学べばいい。