不適切会計問題で東芝が揺れている。不正は全社で組織的に行われていた実態が明らかになり、調査した第三者委員会は歴代社長の責任を厳しく追及している。8月31日に予定していた2015年3月期決算発表と有価証券報告書の提出は延期となり、不適切会計は深刻化してきた。東芝と比べると規模は小さいが組織ぐるみで経費流用した支店長がいる。日本の企業では不正会計が日常的に行われているのか。『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著 プレジデント社)より、「リストラ・解雇」の最新事情をお届けする。

経理の不正操作は認めたが……

「最初は単純な経費流用事件かと思いましたが、蓋を開けてみてビックリですよ。まかり間違えば会社の信用を大きく傷つけるところでした」

こう語るのは大手事務機器メーカーの人事部長です。

事の発端は経理部長の内密の相談でした。西日本地区の支店の設備や備品購入などの経費の使用が他の支店に比べて異様に多い。支店の経理課長が私的に流用している疑いがあるというものでした。

人事部長は、直接本人を問い質すように依頼し、本人が認めればしかるべき処置をすると経理部長に伝えました。数日後、支店に出向いた経理部長の電話を受けた人事部長は話を聞いて驚愕しました。

「本人は経理の不正操作は認めたのですが、自分は一銭たりとも使っていない。捻出したカネは支店の慰安旅行や打ち上げに使われ、すべて支店長のAの指示でやっていたと言うのです」

『人事部はここを見ている!』溝上憲文著(プレジデント社刊)

組織ぐるみの可能性があると思った人事部長はすぐさま社長に報告。社長から「表沙汰にならないように秘密裏に処理するように」と命じられました。人事部長は部下に支店の出張経費などすべての経費を洗い出すように指示。その結果、3年間で流用した経費は約1000万円。Aの指示で経理課長が操作を行い、直属上司も黙認していることが判明しました。

「Aはそれほど仕事ができるわけではなく、上席役員の“茶坊主”一筋でやってきたタイプです。本社の課長から支店長になったとたん、急に威張りだし、権力を誇示するために流用したカネで支店の社員に飲み食いさせていたのでしょう。A個人も流用し、派手に遊んでいたこともわかりました」

人事部長はAに引導を渡す前に上席役員に事の次第を告げました。驚いた役員は、不安げに「告発するのか」と聞いてきました。部長は「いえ、社長はそこまで考えていません。彼には依願退職をしてもらいます」と伝えると、ホッとした表情を見せたそうです。

本来なら懲戒解雇が相当です。経理部長と課長は降格の上、子会社に配置転換しました。課長を解雇すれば、内部告発をしかねないことを考慮した処置ということです。

※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。