【竹内】入部した後、伸びる選手と伸びない選手の違いはどこにありますか。
【原】目標管理の目線で言うと、伸びる選手は「妄想」を抱いていないということでしょうね。目標と妄想は違います。目標は手の届く「半歩先」に置き、それを目指して練習する、その繰り返しだと思います。
【竹内】半歩先の目標を立て、「あっ、達成できた」「楽しいな」と思うから一歩進み、それを積み上げることで気がついたらはるか遠くまで来ているというわけですね。
【原】その通りです。
【竹内】ところで、目標管理では、掲げる目標が本人にとって腹落ちしないと、どうしてもコミットできないと思うのですが、どう指導されていますか。
【原】まず自分自身で考えて実行させる必要があると思います。たとえば、陸上競技で一番大切なのが規則正しい生活ですが、監督命令だと思ったら絶対に腹落ちしません。うちのチームは朝5時に起きて、夜は10時門限の10時15分消灯なのですが、やらされ感があるとぎりぎりになったり、門限を破ったりしてしまう。自分自身が「箱根で勝つ」という目標を持ち、そのために必要なんだと思っていたらそんな行動はしません。結果が出はじめるとより自己管理しようという意識になり、いつも以上に早く帰って体を休めようという思考になるのです。
私が勤務していた中国電力はQC活動(少人数での自発的改善活動)に熱心で、監督になるときにその手法を取り入れて目標管理をはじめました。少しずつバージョンアップして、今は1カ月ごとにチームで目標管理ミーティングを開き、個々人がA4用紙1枚に競技面と生活面の具体的な目標を書いて張り出しています。
【竹内】その目標を立てるときに「妄想なのか」「保守的なのか」「ここは達成できるのか」を助言して最適な目標にすることがポイントですね。
【原】そうです。ただ、適切に目標設定をしても、外的要因によって結果が出ないこともあります。たとえば、記録会で自己ベストが出ても、たまたま追い風が吹いていたとか、その逆に向かい風で記録の悪いときもある。だから1回出た自己ベストが自分の実力ではなく、3回測って平均的なタイムが本当の実力なんだと言っています。
【竹内】なるほど、たまたま外的要因があって記録にブレが出る。
【原】火事場のバカ力というのもある。彼女ができたから張り切って(笑)、実力以上のタイムが出ることもあります。逆に身内に不幸があってタイムが落ちてしまうケースも。人の心は常に揺れ動いていますからね。
【竹内】それは、すごく左右されます。