2015年9月30日(水)

意外に多い“大人の”発達障害

PRESIDENT 2015年5月4日号

著者
田中 康雄 たなか・やすお
「こころとそだちのクリニック むすびめ」院長

精神科医。児童精神科医。臨床心理士。北海道大学名誉教授。北海道大学大学院教授を経て、クリニックを開院。発達障害の特性をもつ子どもや大人とその家族、関係者と、つながりあい、支えあい、認めあうことを大切にした治療・支援を行う。

「こころとそだちのクリニック むすびめ」院長 田中康雄 構成=Top communication
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職場に「どこか話が噛み合わない人」はいないだろうか。

たとえば目立って遅刻が多いのに「移動時間を間違えた」とか「出発前に急に別のことがしたくなった」とか悪びれたところのない人。また机に書類を山と積んでいる人。隣のデスクにはみ出しそうなのを見かねて「ちょっと片づけたら」と言っても「このほうが落ち着くんだ」と意に介さない。

「それがトラブルの原因となり、本人も“生きづらさ”を感じているなら、発達障害を疑ってみたほうがいいですね」と話すのは臨床精神医学が専門の田中康雄氏。1990年代から子どもを中心に発達障害に苦しむ人たちを診察し、札幌市で開院した「こころとそだちのクリニック むすびめ」には、北海道外から来院する人もいる。

「本人に悪気はありません。自分の気持ちに正直に生きているだけです」

発達障害の疑いがある人は、一般社員に限らない。むしろ、周囲への影響が大きいのは管理職だろう。思いつきで仕事の指示を出し、その日のうちに正反対の指示を出すなど、振りまわされる部下たちは大変だ。一流大学出身で社内の地位は高く、仕事ができそうなタイプでも、実は発達障害を抱えているケースはあるという。

「流通業にお勤めのある患者さんは、口八丁手八丁でお客さんに商品をすすめるのが得意。その販売実績を買われて、本社の戦略部門に大抜擢されて管理職になりました。ところが、重要な企画会議でも落ち着いて討議ができない。周囲とぶつかるようになり、上司批判や他人攻撃のメールをあちこちに発信して問題になりました」

そんな子どもっぽい行動に走る人がいる一方で、冷静に自分が管理職に向かないと自覚している人もいる。

「昇進の時期が近づくと、管理職にされないかと不安でたまらない人がいます。自分には部下の気持ちを推し量る能力などないと恐れていました」

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