【原】営業マンでもマネジャーが一番景気のよかったときを基準に計画を立ててしまうと、営業マンの心が折れてしまいます。たとえばアイスクリームの営業で、昨年は猛暑だったから非常に売れたのに、そこを基準に今年は何パーセントダウンだと言われるとモチベーションが下がります。

【竹内】まったく外的な要因なのに。

【原】それをもとに人事評価をされたときには、もうやる気が出ません。だから管理職は数字での評価はもちろんですが、その数字の背景を見る力もないといけません。

【竹内】どの企業でも目標管理を導入していますが、数値だけ設定し、あとは「達成しなさい」と言って放り出すことがよくあります。

【原】その数字にたどり着けないとき、阻害要因がある場合には、なぜそれが起こるのか、いつになったら乗り越えられるのかを伝えますね。それらを伝えるのが管理職の役割だと思います。

【竹内】ただ、さまざまな要因を除いても、学生が目標タイムに到達できなかった場合は、どうフィードバックしていますか。

【原】たとえば5000メートルで目標は14分だが、今は15分かかっているとします。この場合の目標は妄想に近くて、その開きは大きいのですが、競技会はいくつもあるので、何度も訓練するうちに自分の立ち位置がわかってきます。

立ち位置を確認したら、そこを基準にして半歩先の目標を粘り強く達成するように促します。

【竹内】あくまで半歩先の目標設定を繰り返すのですね。

【原】はい。その過程で「どうして達成できなかったのか」を選手自身にも尋ねます。いつもベストタイムで走ることが目標ではないことも伝え、目標の位置づけを理解させるのです。そうすることで前向きにトレーニングができます。

【竹内】フレキシブルに目標の位置づけをするのですね。

【原】今の若い子は私たちの世代より頭がいいので、監督が「教えてやる」という態度は通用しません。いくらでも情報を得られる世代ですからね。たとえば私がサッカーの指導者で、古典的な戦術を教えても、選手たちはネットで欧州のリーグで使われている最新の戦術を調べられます。監督の仕事は教えるのではなく、選手の意識づけ、動機づけを行うことなのです。