1期生にはgiftee社長の太田睦氏がいた。太田氏が立ち上げたサービスは、オンライン上からプレゼント(マイクロギフト)が贈れるというもの。例えば友達の誕生日に全国チェーンのコーヒーチケットを贈る、といった使い方ができる。当初、太田氏だけで営業に回っていたが、全国展開しているような企業は見向きもしてくれない。だが、そこでサポートを担当したKDDIの社員が同行すると、とりあえず大抵の企業は面会してくれる。結果として世界各国で多数の店舗を展開する大手チェーンとの間で話がまとまった。

プログラム終了後、KDDIは最終的にgifteeへの出資を決定。同サービスは現在も拡大を続けている。

gifteeはKDDIのサポートでうまくいったケースだが、∞Laboでは、7期から三井物産、セブン&アイ・ホールディングス、コクヨなど13社のパートナー企業が支援に参加した。パートナー企業の力も借りるようになったきっかけは、ネットサービスの変質にあった。江幡氏は言う。

「B to Bのソリューションやリアルなビジネスの分野に関わるアイデアになると、私たちが得意とする通信とITだけでは支援しきれない。その都度、お付き合いのある企業さんに知恵を借りにいっていたのですが、思い切って∞Labo自体への協力をお願いすることにしました」

例えば7期生のDr.JOYは、医師と患者、医師と看護師のコミュニケーション活性化を目的とする医療機関向けのSNS事業だが、KDDIと三井物産で支援し、サービス開始までこぎつけた。

「起業家自身が医師ということで、医療機関内のコミュニケーションに関する課題もよく理解していて、面白いサービスになると思いました。ただし、その医師はまだ若く、製薬会社との間に広い接点があまりありませんでした。そこでパートナー企業の三井物産を通じて、製薬会社と打ち合わせる機会を設けました」(江幡氏)

∞LaboではKDDIもパートナー企業もアドバイス料などは取っていない。成長してからの果実に期待するからだ。

「卒業生とパートナー企業との事業提携の体制もあります。KDDIも含め、収益性が見込めれば実際の事業提携が進むでしょう。ベンチャー単独であれば10億円の売り上げ達成に3年かかるところを、大企業と協働すれば、2年で実現できるかもしれません。もちろん、それはKDDIにとってもメリットになります」(江幡氏)