日本企業で欠かせないビジネス慣習のひとつが朝礼だ。昭和の昔、サラリーマンの仕事は朝礼、ラジオ体操、上司の精神訓話から始まった。月日が流れ、体操と精神訓話は姿を消しつつあるが、朝礼には時代を超える効用があるのだろう。いまもビジネスマンたちは朝から元気に声を出している。

2007年から5年間、全国を歩いて企業の朝礼を取材した。80社ほどの朝礼に参加したが、なかには他社とひと味もふた味も違うそれを導入している会社があった。

社員が道路を掃除する朝礼、全員で歌う朝礼、朝ごはんをともにする朝礼、勉強会の要素を含んだ朝礼……、それぞれ参加する社員が飽きないように工夫を凝らすという特徴が見て取れた。そして、朝礼にさまざまな試みを導入していた企業の業績はいずれも悪くはなかったのである。確かに本業がアップアップの状態では、朝から歌ったり、雨の日も外へ出て道路掃除をしようなんていう余裕はないだろう。

今回久しぶりに朝礼現場へ行き、次の3種から元気のいい会社を見学した。

A:販売、飲食などサービス業
「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」などの接客用語を唱和するのが特徴だ。

B:工場など現場の朝礼
彼らの朝礼の目的は一にも二にも安全思想の徹底である。

C:ベンチャー、ITなどを含む営業系の企業
こうした企業の場合はミーティングの要素が大きい。社員同士で情報を共有しておくことが他の業種よりもビジネス現場で必須だからだ。

JALの「出発前ブリーフィング」

「私たちは第一に保安要員ですから、出発前ブリーフィングでも安全確認が必須です」と語るCAの福田幸子さん。

ここは羽田空港の第一旅客ターミナル隣の質素なオフィス。業績のV字回復で元気を取り戻した日本航空の客員乗務員(CA)らが出発を待つスタッフルームだ。小さな椅子と机が無数に置かれていて、10人前後のグループごとに机を囲んで座り、盛んに何かを話している。乗務前に必ず行われる「出発前ブリーフィング」だ。

「機内で担当するドアの位置に合わせて、机のまわりに座るのが基本です。飛行機もメンバーも毎日変わります。自己紹介の後にみんなで安全事項を確認します」

にこやかに案内してくれるのはCA歴12年目の福田幸子さん。