「前日と今日のフライトでは、座る場所も飛行機の種類も異なります。慣れとは怖いもので、前のフライトを引きずってしまいがちです。今日は機体の右ではなく左サイドを担当する、といった当たり前のこともお互いに確認し合うことで気持ちを切り替える効果があります」

そのとき、「この機材(飛行機)には久しぶりに乗ります」と言い添えることもある。不慣れであることを明かして、フォローを要請するためだ。

先任(写真上の白い制服の女性)が指名するフライトごとの「安全コーディネーター」が、マニュアルやDVD映像を使って非常ドアの扱い方などを確認する。テーブルにつく順番は機内の座席位置と同じである。

現在、日本航空では4種類の飛行機を使用しており、機体ごとに非常用設備の内容や位置は異なる。先任と呼ばれるリーダーから指名された「安全コーディネーター」が、先任とともに安全事項マニュアルを全員に確認していく。

「JALには『確認会話』という社内用語があります。わかりきっているような業務内容でも、いちいち確認し合うことで、エラーをなくすよう心がけています」(広報部の本多渉さん)

福田さんによれば、いいブリーフィングには「確認会話」を踏まえた経験知の持ち寄りがある。

「カーペットの継ぎ目が飲み物を運ぶワゴンのタイヤにひっかかりやすい機材もあります。お客様が歩く際には問題がないわずかな継ぎ目ですが、私たちは気をつけなければなりません。経験者が事前に教えてくれることで『注意しよう』と心がけることができます」

サービス業の朝礼には付き物の挨拶やマナーに関する唱和は行わないが、「一人旅のお子様や松葉杖のお客様がいらっしゃるときなどは、みんなで情報を共有します」(福田さん)という。JALが日本有数の「おもてなし」レベルを保っているのは、こうした工夫があるからなのだ。

(尾関裕士=撮影)
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