2015年5月15日(金)

「己を信じよ」 ~錦織圭とマイケル・チャンの信頼関係

スポーツ・インテリジェンス【第10回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
松瀬 学 まつせ・まなぶ
ノンフィクションライター

1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書は『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)など多数。

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松瀬 学=文
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師弟間の「リスペクト」

テニスの錦織圭の躍進を見るとき、マイケル・チャンコーチの存在を抜きには語れない。両者の間に信頼関係があってこそ、コーチの指導は効果を発揮する。大事なことは「リスペクト」。錦織はチャンコーチを尊敬し、チャンコーチも錦織を尊重している。

この幸せな関係は、4年前の11月、東京で行われた東日本大震災支援を目的とした親善試合がきっかけに始まった。依頼を受け、チャン氏がコーチに就任したのは2013年12月だった。

チャンコーチが錦織に帯同するのは年間、20週間程度。技術指導は11年からダンテ・ボッティーニコーチがフルタイムで付いているから、チャンコーチは大事な大会を中心にとくにメンタル指導を担っている。チャンコーチの口ぐせが「Believe yourself(自分を信じろ)!」だそうだ。

現在43歳のチャンコーチは男子プロテニスの名選手だった。錦織(身長178cm)とほぼ同じ175cmという小柄なからだながら、豊富な運動量と正確なショットで活躍した。スマート(頭脳的)な選手で、メンタルが強いといわれていた。

17歳のときの1989年、赤土のクレーコートの全仏オープンを制した。90年代の全米オープンで、現役のマイケル・チャンをたまたま取材したことがある。彼はコートチェンジの際、椅子に座ってラケットをにらみ、「I can do it(自分はできる)」と呪文のように小声で何度も呟いていた。その背中の妖気が忘れられない。

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