自分が担当する仕事でトラブルが発生している最中に「定時だから帰ります」と言って帰ってしまう社員がいたとすれば、それはワークライフバランスの勘違いです。ワークライフバランスとは単に残業をしないことなどという短絡的な意味で捉えてはいけません。

日本の年間実労働時間は米国並みに下がった!
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どうしても5時から英会話学校に行くのなら、きちんと上司と話をすべきです。そして「帰ることは、今は会社にとってプラスにならないかもしれないけど、将来的に必ず会社のプラスになりますよ」というふうに説得できればいいのです。

一方、上司としては日頃から部下の考えていることを理解し、ワークライフバランスについてよく話し合っておくことが重要です。ワークライフバランスの本当の意味を説き、会社にとってプラスになるように動機づける。同時に、個人としても幸せな人生になるように人生の先輩として助言することが大切です。 例えば繁忙期なのに、定時だからという理由だけで帰宅する社員がいるとすれば、本人にとって当日は楽しいかもしれませんが、長期的に見れば人間として育たないし、会社にとってもプラスになりません。

会社というものは一定の目標を掲げ、それに合わせて働いてくれる人材を求めています。個人の方向性と会社の方向性が一致していればベストですが、一致しなければ自分の能力を最大限に発揮できません。全社員の方向性が会社の方向性と一致しているときに企業は最大の価値を生み出すのです。

個人と会社の方向性が一致していなければ、双方ともハッピーになれません。今やっている仕事が向いていないとか自分の人生の目標に合わないと思ったら、仕事自体を変えるべきです。

上司が部下に真のワークライフバランスを説いて聞かせるには、まず上司自身が自分なりの見識と知恵を持つべきです。ワークライフバランスを語るなら、自らバランスの取れた人生プランを持ち、実践する必要があります。人生を楽しむ姿勢です。そういう姿が部下からの信頼を集め、部下とのコミュニケーションを深め、部下を良き方向へと導くことに通じるのです。

(斉藤栄一郎=構成 鶴田孝介=撮影)