現場の力を「今」から「未来」に向けて発揮させる

ただしLFP経営を成功させるためには、いくつかの条件がある。

第1に、ミッションを絞り込み、明確にすること。

第2に、永続的な組織とはせず、ミッション達成に期限を設けること。

第3に、チームのリーダーには年次に関係なく、能力的に最適任と思われる人材を抜擢すること。

第4に、メンバーは専任とし、ミッション達成に責任を負わせること。

第5に、経営とチームを直結させること……等である。

一般的なプロジェクトチームとLFP経営におけるタスクフォース型チームとの大きな違いは、メンバーが少数かつ専任であることだ。

タスクフォース型チームには、達成すべきミッションとそれを達成するための期限(納期)が与えられる。ただし達成の方法についてはチームに一任される。同時にチームは、達成についての責任を負う。専任であるため逃げ道はない。

さらに期間限定の組織であるため、リーダーは年次を気にすることなく、自由に人材を登用できる。若手にリーダーとしての経験を積ませることができ、また企業内の若い層のモチベーションが高まり、組織全体の活性化にもつながる。

LFP経営ではこのようなタスクフォース型チームに、既存のピラミッド型組織に比肩する重要性を与え、人材は必要に応じてその両方を行き来させることによって育てるのである。

日本企業の強みは「現場」にある。しかし従来の組織のままでは、「現場力」が発揮されるのは「現業」においてのみである。ここに非日常的な課題解決のためのタスクフォース型組織を加えることにより、現場力を「今」から「未来」に向けて発揮させることが可能となる。

LFP経営はこうした問題点を解消し、人を育てつつ組織の変化への適応力を高める、サステナビリティの高い経営手法である。

これまでも多くの企業はプロジェクトや委員会といった場を設営し、個別テーマに取り組むという手法を採ってきた。しかし、その多くは中途半端に取り組んで、中途半端な結果に終わってしまっている。

BRのようなタスクフォース型組織を、従来型組織と並列する中核組織として位置付け、2つを一体化しながら運営するハイブリッド組織。これこそが、VUCAワールドにおいて勝ち残るための組織戦略なのである。

(久保田正志=構成 時事通信フォト=写真 平良 徹=図版作成)
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