2015年5月7日(木)

脱フラット型経営! トヨタの最強組織づくり

PRESIDENT 2015年2月16日号

著者
遠藤 功 えんどう・いさお
早稲田大学ビジネススクール教授 ローランド・ベルガー会長

遠藤 功早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士。三菱電機、米系戦略コンサルティング会社を経て現職。良品計画社外取締役、ヤマハ発動機社外監査役も務める。主な著書に『現場力を鍛える』『見える化』『新幹線お掃除の天使たち』など。

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早稲田大学ビジネススクール教授 遠藤 功=文 久保田正志=構成 時事通信フォト=写真 平良 徹=図版作成
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ビン・ラディンを暗殺した米軍の少数精鋭チーム

今、世界の経営者が頻繁に口にするキーワードが「VUCA(ブカ)」だ。「Volatility( 不安定)」「Uncertainty(不確実)」「Complexity(複雑)」「Ambiguity(曖昧模糊)」の頭文字を取った略語である。

テクノロジーの進歩や予測困難な変化に晒され、世界の市場は不確実性、不透明性を増している。その変化の速さは20年前、30年前とは比べものにならない。VUCAはそんな状況を指す言葉だ。安定期には安定期に適した経営スタイルがあるように、現在のような不安定期には、それに適応した新しい経営スタイルが求められているのだ。

ひと頃、「スピード重視の時代に、ピラミッド型組織は時代遅れ」「トップ一人以外は全員平等で、各人がITで結ばれたフラット型・ネットワーク型組織が理想」とされていた。故スティーブ・ジョブズ氏、李健煕会長を擁したアップル、サムスンがそのイメージを代表している。

すべての決定を一人に集中するこの体制は確かに意思決定が速く、変化の激しい時代に適している。しかしその一方、社員全員がトップの指示を待つだけで自ら判断することがなくなり、次世代のリーダーが育たないという構造的欠点がある。

しかも、組織が大きくなると管理の目が行き届かぬうえ、階層なしでは誰も他人の面倒を見ず、人が育たないため組織力が劣化していく。フラット型は、日本の組織では必ずしも効果的に機能していない。

VUCAワールドに伍するスピードと、現場の社員の自立を両立させる手法はないのだろうか。

私が日本法人会長を務めるローランド・ベルガーでは、その新しい経営手法として「ライト・フットプリント(Light Footprint=LFP)経営」を提唱している。

LFP経営とは一言で言えば、現場が自ら判断し行動する、自律型組織を核とする経営スタイルである。それにより、巨大組織における情報伝達ロスと遅延の問題を解決し、刻一刻と変化する市場に臨機応変に対応していくことを目指す。

このネーミングは、実は米国の軍事戦略が由来で、2009年のオバマ米大統領就任以降に使われ始めた。ブッシュ前政権が対テロ戦争で行った大規模な地上軍投入にかえて、少数精鋭の特殊部隊を用い、敵にピンポイントで効果的な打撃を与える「俊敏に対応し、軽くて薄い足跡しか残らぬ戦略」を志向している。

その典型が11年5月のウサマ・ビン・ラディン氏暗殺作戦だ。パキスタンに潜伏するビン・ラディン氏発見・殺害のため、米軍は十数名とも伝えられる少数精鋭チームを現地に送り込み、目的を達成した。

現在、軍に求められる役割が、従来のような「対国家」から「対テロリスト」に変わってきたことを踏まえ、同様のタスクフォースを数百も編成し世界各地に送り出している。

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