ユーザー一人ひとりの覚悟

次に第2点である。現在の情報環境を私たち自身でまともなものにしていく努力を考慮の外に置くのは間違いである。それを検索サイトだけに委ねておけばいい問題でもない。オンライン上の情報から他人の不利益になるような情報をどうすれば失くすことができるのか。完全になくすのは無理だが、それをなるべく軽減していきたいというのは、実は、私が長年提唱している「サイバーリテラシー」の根本問題である。それはIT社会に生きるすべての人のリテラシーと倫理(モラル)の問題に帰着する。

ジットレインも書いていたが、オンライン上の不適切な記事にどう対処していくかは、法的というより社会的な問題であり、検索サイトの努力も含めて、周知を集めて考えていかなくてはいけない。検索サイト、技術系ばかりでなく人文系も含めた専門家、第三者機関、NPOなどが参加したより大きなグラウンドの中で、豊かなIT社会を築き上げていくための地味な努力が不可欠である。

私は5年ほど前、オンライン上の情報の「時効」について書いたことがある。紙の新聞記事なら過去の記録は時とともに風化し、襖の下張とか大掃除のときに見付けた過去の新聞紙などで思わず知るぐらいである。情報がデジタル化して「サイバー空間は忘れない」ものとなり、それらは簡単に検索できるようになった。永久保存すべき情報はともかく、どうでもいいデジタル情報は一定期間がくれば消えていくような技術的解決はないのだろうか、という趣旨だった。(「タイガーテキスト」と情報の時効(雑誌『広報』2010年5月号所収)」(http://www.cyber-literacy.com/blog/archives/2010/07/105.html

EUの「忘れられる権利」は、そういった問題を法的に解決しようという試みで、いまそれは「検索サイトからのリンク削除」という方向で動いているけれども、もっといい解決策を模索することが必要である。インターネットは「個」の力をあぶり出す。一人ひとりの力をこういったことに注ぎ込むことが大事である。検索サイトがそれぞれの削除基準を定め、それを実行に移すとき、どのサイトがより適格なのかを選択するといった行動で「個」の力を発揮することもできるだろう。

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