――現状に満足して努力しない自分に焦り。ヤル気を出すにはどうすればいいですか?

現状に満足されているなら、問題ないではないですか?

――自分が努力していないことに対する漠然とした不安感が消えないんです。

自覚があるなら、不安がなくなるまで努力されたらいいのでは。

一般に焦りは自分の「やりたいこと」と「やれないこと」とのアンバランスから生じます。やりたいことに100%挑戦できる環境なら、おそらく焦りの気持ちは生じません。

やりたくても、それに挑戦できないという場合、2つのケースがあると思います。

1つ目は、「やりたいことがあるのに会社や周囲が理解してくれない」ケース。その場合は、「僕はこれがやりたい」と、常に言い続けるしかありません。

2つ目は、「やりたいことはあるが、自分にその能力が伴っていない」場合。ケースとして多いのはこちらではないでしょうか。何かしないと、と焦れば焦るほど、悪循環に陥ります。まずは気持ちを落ち着けて、時間をかけて自分の能力を向上させなくてはいけません。力を蓄えれば、いつか必ずピンチヒッターなどで活躍する機会が訪れます。

――やりたいことが全くわからなかったらどうすればいいですか?

友達に、「俺の欠点を3つくらい言ってほしい」と頼んで、指摘してもらうのがいい。配偶者や恋人に聞いたっていい。3つどころか、もっとたくさん指摘してくれますよ(笑)。そして、まずそこを直す。

――出口さんが僕の上司だとして、「何か目標を決めたいんですが、何がいいですか」と聞いたら、どんなアドバイスをもらえますか?

僕だったら「1年以内にTOEFLで100点を取って持ってこい」と言いますね。英語はどのような仕事をしている人でも、やって損になりません。日本語人口は1億人ちょっとですが、英語人口は何十億もいる。インターネットでも、情報量が10倍以上違います。しかも情報のクオリティが高い。大学のレベルも英語圏の大学が圧倒的に高いせいでしょうか。ネット検索しているだけでも、視野が広がって楽しくなります。

僕は英語ができなかったので、英国人に誘われて、映画やミュージカルに行ったとき、みんなが笑うと間髪入れずに「一緒に笑う」という訓練をやりました。英語ができれば、こういう悲しい思いをしなくても済みます(笑)。

――出口さんは目標を立てて、それを達成するタイプですか?

僕は基本的には、今が一番楽しいと思うタイプです。映画『カサブランカ』のハンフリー・ボガートのように、「昨日のことなど覚えていないし、明日のことなどわからない」と。ただ、仕事上では、手近な目標を立ててクリアするのは大好きです。

Answer:何をしていいかわからなかったらとりあえず「英語」。

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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