6. 議論の枠だけを示す
自分では考えずに「場」へ投げかける

男性はパズルやブロック、プラモデルが好きです。それは原因を自分で追求したいという「原因追求欲求」が強いから。この性質を利用します。会議の冒頭で「テーマを3つに絞っておきませんか」「5つの段階に整理しましょうよ」と大枠を提案する。アイデアを練る材料として、100個の具体例を用意されるよりも、抽象度の高い大枠を提示されたほうが、「枠を埋めたい」という欲求が刺激されるのです。

「原因追求欲求」で相手を操る

今回の記事も「7つの手段」を挙げていますが、それも読者の皆さんの欲求を刺激するためです。

会議では、本人が大枠の中身について有効な案を出さなくても、周囲からは「こいつは枠組みをつくれる、たいしたヤツだ」と評価されるはず。一番先にパンチを出した者が、場の空気を制するのです。

7. パワーポイントを使わない
視線を動かすと相手の心も動く

プレゼンの際、どうすれば内容以上に話を大きく感じさせることができるか。まず大事なことは、動きをつけることです。視線の自由度と心の自由度は正比例します。だから会議で語り手が座ったまま全く動かないでいると、聞いてるほうもだんだん窮屈な気持ちになっていく。そこで音をパンパン立てて書類を揃える、立ち上がってホワイトボードに書く、スティーブ・ジョブズのように前に出て、端から端まで歩きながら話す──。そうした動きを目で追っているだけで、話のスケールが大きく感じられます。相手の視線を動かせる人とは、頭の中を動かせる人なのです。

そしてツールが少ないほど、聞き手は集中して話を聞くようになります。講演会では資料映像を使わずマイク1本で話をしたほうが、「いい話を聞いた」という感覚が強くなる。パワーポイントを使わない勇気も、時には必要です。

植木理恵(うえき・りえ)
1975年生まれ。心理学者、臨床心理士。東京大学大学院教育心理学科修了。日本教育心理学会において最難関の「城戸奨励賞」「優秀論文賞」を史上最年少で連続受賞。現在、都内総合病院心療内科でカウンセリング、慶應義塾大学理工学部で講師をつとめる。主な著書に『人を見る目がない人』(講談社)、『シロクマのことだけは考えるな! 人生が急にオモシロくなる心理術』(新潮文庫)などがある。
(鈴木 工=構成 奥谷 仁=撮影)
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